「拘禁刑」来年6月導入控え、対人スキル養う刑務作業…円滑な社会復帰につなげる狙い
法務省が2018年、出所者を雇う協力雇用主に行った調査では、雇った出所者の約5割が半年以内に辞め、5年を超えて続いたケースは5・8%。「言われたことしかしない」「同僚とトラブルを起こす」などの声があり、「就労する上で必要な基礎的能力を(刑務所で)身につけさせてほしい」との意見が出た。
こうした中、22年6月、改正刑法が成立し、拘禁刑の導入が決定。今後は、より柔軟な処遇が可能になる。
法務省の検討会は22年7月、「コミュニケーション能力や課題解決能力など、社会人に求められる能力の向上を図り、受刑者の年齢や障害などに応じた処遇を充実させる」との方針を表明。同省の担当者は「幅広いカリキュラムを準備していきたい」と語る。
刑務官の負担増
これまでよりきめ細かい処遇が求められ、刑務官は負担が増す。さらに、教育や職業訓練などの資格を持ち、指導的な役割を担う専門技官も、これまで以上に大きな役割を求められる。
法務省は、外部の専門家や民間団体との連携を図る考えだが、ある刑務所関係者は「受刑者一人一人に十分対応できるだろうか……」と不安がる。
同省の検討会の委員を務めた山口県立大の水藤昌彦教授(司法福祉)は「心理学や福祉を学んだ刑務官を増やし、チームとして処遇を充実させることが重要だ」と語る。
◆拘禁刑=受刑者を刑事施設に拘置し、更生のための必要な作業や指導を行う刑。従来の刑務作業を一定維持しながら、各受刑者に応じた処遇が可能になる。導入に伴い、従来の懲役刑と禁錮刑は廃止される。