【相撲編集部が選ぶ名古屋場所5日目の一番】三役時代を思い出させる鋭い動き。返り入幕の若隆景が4連勝!
一番期待できるのはやはり若隆景かという気がする
若隆景(寄り切り)美ノ海 「大関候補」と言われたころの相撲が、よみがえってきたようだ。 【相撲編集部が選ぶ名古屋場所5日目の一番】錦木が若元春も撃破。1横綱と大関取りトリオを総ナメし、先場所から13連勝! 今場所返り入幕の元関脇若隆景が、低くて素早い美ノ海を、それ以上の低さ、素早さ、さらには力強さも加えて圧倒、2日目から4連勝とした。 この日の相手の美ノ海は、幕内では初の顔合わせ。一番最近の十両での対戦でも4年前という相手だが、左の廻しを許すと力を発揮するので、とにかくそこが警戒ポイントだ。 立ち合い、若隆景は低く当たりながら、この日はまず右を下から差しにいき、相手の左を浮かせにいく作戦に出た。美ノ海が右手を使って若隆景の腕を手繰ろうとしたところで、これを嫌って左からのイナシ。あくまで相手の左から遠いほうへ回る作戦だ。これでいったん相手をかわした後、相手に近いほうの左からはおっつけ、右は相手の脇に当てて距離を取りながら、最後は差しにいって右下手。その形のまま前傾姿勢で圧力を掛け続け、相手に廻しに触れさせることなく寄り切った。 「しっかり集中して、一番一番、自分の相撲を取るだけです」と、若隆景はこの日も多くを語らなかったが、2日目に勝ったあとには「いつもどおり、下から攻めようと思っていきました」と語っており、その意識が、好調を支えているようだ。今場所は、差しにいったりおっつけにいったりは相手によって違うが、それほど体を丸めず、相手から廻しの遠い形を保ちながらの低い立ち合いが完全に復活、いい流れを作ることに成功している。初日こそ、ちょっと右のおっつけにこだわりすぎたか、宝富士のタイミングのいい突きに崩されたが、その日も立ち合いは悪くなかった。2日目以降は鋭い立ち合いを生かしての圧勝を連発。今場所、先手を取れなかった相撲はまだ一番もないという好調さで、幕内下位ではかなりの確率で星が取れそうな感じが漂ってきている。 昨年3月場所に右ヒザを痛めて休場が続き、関脇からいったんは幕下まで落ちたが、「一日でも早く幕内の土俵に上がれるように」の思いで復活し、番付上は今場所がちょうど1年ぶりの幕内。復活途中の今年3月場所では十両で初日から7連勝しながら後半崩れて9勝止まりとスタミナに課題を残したこともあったが、先場所は14勝1敗で十両優勝してその不安も払しょくしており、今場所このあとにも期待がかかる。 この日はただ一人無敗の横綱照ノ富士が勝って全勝をキープ。その一方で大関琴櫻と、先場所まで大関だった霧島の両力士が2敗目。大関豊昇龍はすでにきのうの時点で2敗となっており、ちょっと上位では照ノ富士を追う存在が探しづらくなってきた。 1敗は平幕勢のみとなり、翔猿、湘南乃海、欧勝馬、玉鷲、そして若隆景の5人。持っている地力と現在の番付、今場所の内容からすると、この中で一番期待できるのはやはり若隆景かという気がする。 今場所が返り入幕の力士に、いきなり横綱の対抗馬を、というのは、いささか期待が大きすぎる面はあるが、場所を盛り上げるためにも、このまま星を伸ばしてもらい、場所後半には、久しぶりの幕内後半の土俵で上位陣と相まみえる姿を見たいものだ。 文=藤本泰祐
相撲編集部