アーバンシック（左）は春の鬱憤を晴らすかのように鋭い脚で突き抜けた（撮影・奈良武）

クリストフ・ルメール（45）＝栗・フリー＝騎乗の2番人気、アーバンシックが中団から抜群の決め手を発揮して重賞初制覇を決めた。2着のコスモキュランダ、3着のエコロヴァルツまでが菊花賞（10月20日、京都、GⅠ、芝3000メートル）の優先出走権を手にした。 ◇ 年明けにのちの日本ダービー馬に迫った実力はやはり本物だった。アーバンシックが直線で目の覚めるような末脚を見せ、ダービー11着の悪夢を払拭。中山の急坂を上がり切ったところで皐月賞2着馬コスモキュランダを捕らえ、重賞初制覇のゴールへ飛び込んだ。初コンビで会心の勝利に導き、自身もこの日5勝目としたルメール騎手も満面の笑みを浮かべた。 「春にダービーを使っていた馬。絶対に能力があると思っていたし、自信がありました。今まではジワジワ伸びる感じだったけど、きょうはパワーがたまっていたし、直線で外に出したらすぐにギアアップしていい脚を使ってくれました」 それにしても見事なモデルチェンジだった。デビュー連勝後、1月の京成杯でダノンデサイルの2着に入るなど素質の高さは誰もが認めていたが、スタートダッシュが遅く、どうしても展開に左右される面があった。この日も発馬はゆっくり。ただ、気が付けば中団のインで先行集団を射程に入れていた。 このルメールマジックには、武井調教師も「❶枠①番でスタートが遅くて大丈夫かと思ったけど、いつの間にか勝てる位置にいて。何であんな風に乗れるのか…」と目を丸くするばかり。直線でスムーズに外のスペースへ出してからの爆発力を見て「ジョッキーがこの馬のいいパフォーマンスを引き出してくれた」とたたえ、待望の初タイトルを喜んだ。 2歳時はわがままで人の扶助が利かず、調教でも僚馬の後ろについていくことしかできなかった馬。「（精神面の幼さが）最初はひどかった。ダービーの頃は何とか2歳馬くらいにはなっていたけど」と語るトレーナーだが、ひと夏越して「2歳と3歳の間くらいにはなったかな。他の馬と比べて1年遅れでゆっくりと着実に成長している感じ」と目を細める。 次走については明言しなかったが、GⅠがターゲットでもちろん菊花賞も候補のひとつ。ルメール騎手に「ゴールまで伸びてくれたし、距離はもつと思う。まだまだ良くなりそう」と言わしめるアーバンシックには秋の大仕事が待っている。（板津雄志）

■アーバンシック　父スワーヴリチャード、母エッジースタイル、母の父ハービンジャー。栗毛の牡3歳。美浦・武井亮厩舎所属。北海道安平町・ノーザンファームの生産馬。馬主は㈲シルクレーシング。戦績6戦3勝。獲得賞金1億1922万8000円。重賞は初勝利。セントライト記念はクリストフ・ルメール騎手、武井亮調教師ともに初勝利。馬名は「洗練された。母名より連想」。