飛行機で台湾に行くとき、なぜか機体が「東南アジアのLCC」だったワケ そもそもなぜ外資が他国へ飛べるのか?
以遠権路線が今もある理由 その1
当時から以遠権を行使していた路線が今でも残っている大きな理由は、飛行機の航続距離の限界にある。 この航続距離のため、かつては前述のように米国から日本を経由して東アジアや東南アジアに向かう路線が多かった。しかし、今では米国東海岸のニューヨークからシンガポールへの直行便があるほど航続距離が伸びたため、その多くが直行便に変更されている。東海岸からの直行便は少ないが、西海岸のシアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスからアジア各地への路線は多くなった。 しかし、LCCが頻繁に使用する小型機については、この原則はまだ当てはまる。例えば、A320neoの航続距離は約6400kmで、東南アジア各地から東京や大阪への直行便を運航するには距離が足りない。そのため、小型機を使用する各社は、日本と東南アジアの間に位置する台湾やマニラを経由する便を運航している。
以遠権路線が今もある理由 その2
以遠権路線がまだ存在する理由のひとつは、日本から該当する目的地への路線が需要の高い路線であることである。 特に、LCCを中心に以遠権路線がある台湾~日本間はかなりの行き交いがある。一例として、2023年に日本を訪れた台湾人は420万人で、韓国に次いで2番目に多い数字である。しかし、日本も台湾も自前のLCCが発達していない市場であり、両国間に就航しているのは大手航空会社傘下の3社(日本側はANA傘下のピーチ、JAL傘下のジェットスター・ジャパン。台湾側はチャイナエアライン傘下のタイガーエア台湾)しかない。 これは、韓国側にティーウェイ航空、チェジュ航空、イースター航空など大手航空会社以外のLCCが多数存在する日韓路線とは異なる点であり、東南アジアの他地域の企業にとっては、以遠権を利用した路線を開設することで競合しやすくなる可能性がある。 また、長年就航しているフルサービスキャリアの路線は、それ自体が高いブランド力を誇っている可能性も否定できない。 例えば、シンガポール航空の成田~ロサンゼルス線は、一時期A380が就航していたが、就航当初は北半球で太平洋路線に投入する路線としては最も早い就航であった。これは、同社が成田初の以遠権路線をブランドとみなし、オール2階建てのA380で運航するだけの需要があった証拠である。
以遠権の存在感継続
第三国のエアラインによる日本発着便のうち、以遠権を使って運航される路線数は、航空機の航続距離の延長により減少しているが、LCCの台湾路線のように、需要が高く、2国間の競争が大きくない市場では、依然として強い存在感を示している。 日本の航空会社は他国に比べて国際路線網が充実しておらず、今後も外資系航空会社が以遠権を活用して日本発着路線を維持していく可能性が高い。
前林広樹(乗り物ライター)