飛行機で台湾に行くとき、なぜか機体が「東南アジアのLCC」だったワケ そもそもなぜ外資が他国へ飛べるのか?
米系の占有率問題
現在、以遠権路線は台湾便が主流となっているが、かつては米国発アジア行きの米国・アジア諸国双方の航空会社は、その航続距離の都合上、アジアの東端に位置する日本を経由する便を運航していた。 特に多かったのは米国系航空会社で、なかでも日本の民間航空会社設立に貢献したパンアメリカン航空やノースウエスト航空はアジア各地に路線を飛ばしていた。 その見返りとして、ふたつの航空会社は日本より先に無制限の以遠権を与えられたため、羽田空港と成田空港をアジアへのハブ空港として運営した。ソウル、上海、マニラ、バンコク、シンガポールなど東アジア・東南アジアの主要都市に多くの路線を就航させた。日本側では名古屋や大阪から発着する便も存在した。 これらの利権を引き継いだユナイテッド航空やデルタ航空も2000年代までは多くの路線を持ち、航空券の価格も安いことが多く、旅行者に人気があった。 しかし、これらの以遠権路線のために、成田空港の発着枠の30%近くを米国系航空会社が占めることになった。これは日本の航空会社にとって不利益をもたらす要因であるとしばしば批判された。 2009(平成21)年、日米両政府は日米航空自由化協定に基づき、成田空港における米国系航空会社の占有率を縮小することで合意した。同時期に始まった羽田空港の国際化、米国本土から東アジア・東南アジア各地への直行便の増加、航空アライアンスの発展により、以遠権路線は徐々に減少している。 2020年3月にデルタ航空の成田~マニラ線が運休したことで、米国航空会社による以遠権路線は消滅した。 また、アジアのフルサービスキャリアが運航するほとんどの米国路線は、飛行距離の延長と日本人の海外渡航の伸び悩みにより、徐々に直行路線となっている。現在残っているのはシンガポール航空の成田~ロサンゼルス線のみである。
台湾路線再び増加
一方、2010年代は日本国内外からLCCの新規就航が相次いだ時期でもある。直行便だけでなく、東南アジアの航空会社も以遠権を生かして、前述のように台北、高雄、マニラを経由してバンコク、クアラルンプール、シンガポールに就航する便が相次いだ。COVID-19が普及するまでは、韓国のLCCによるグアム線、スクートやエアアジアXによる関空~ホノルル線もあった。 ここ数年、円安による日本の海外旅行需要の回復の遅れなどもあり、日本発の需要を見込んだ以遠権を持つ路線の開設は伸び悩んでいた。しかし、2024年3月にエアアジアグループによる成田~高雄線、那覇~台北線の開設が報じられるなど、双方向からの需要が見込める台湾路線が再び増え始めている。 エアアジア・グループは当初、成田~台北線を開設する予定であったが、マレーシア民間航空庁がこの路線の運休を命じており、日台線がいかに厳しい競争環境に置かれているかを示している。 フルサービスキャリア市場では、ユナイテッド航空が成田~セブ線の就航を発表した。同路線は、成田から運航する米国5路線(サンフランシスコ、ロサンゼルス、デンバー、ニューアーク、ヒューストン)への乗り継ぎ需要に対応するもので、米国系航空会社による4年ぶりの以遠権路線復活として注目を集めている。