ついに全車種が出荷再開。ダイハツがもくろむ「再起のシナリオ」とは?
販売店にとっては生産・出荷停止のタイミングが最悪だったと指摘する声も。 「販売店は怒り心頭ですよ。何しろ初売りや3月の決算セールは売り時稼ぎ時。ところが、例年なら年末年始に大々的に流すテレビの初売りCMも自粛。売るクルマもなく、何ヵ月も開店休業状態が続いていたわけです。言うまでもありませんが、これではおまんまの食い上げです」(自動車誌幹部) 週プレも販売店をいくつか取材してみたが、恨み節とボヤキ節のオンパレード。そんな中で、中堅のセールス担当からはこんな意見が。 「隣接するライバル店の決算セールが大盛況で(苦笑)。その姿を指をくわえて眺めているのはキツかった。これからは売るクルマがあるので営業にも身が入りますが、新経営陣には世間に広がった不正や闇落ちのイメージを一刻も早く払拭してほしい」 ■ダイハツの切り札は軽EV 新生ダイハツを率いるのは、親会社であるトヨタの中南米本部長を務めた井上雅宏社長だ。再起の具体的な道筋はどうなっているのか? 前出の自動車誌幹部が言う。 「新生ダイハツはトヨタグループの中で、いかにその強みを発揮できるかが問われています。今年2月にトヨタの佐藤恒治社長は、『ダイハツの原点は国民車である軽自動車。良品廉価なクルマづくりは本来のダイハツの強み。その原点に立ち戻り会社をつくり替える覚悟で、ダイハツらしさを取り戻してまいりたい』と指針を提示しています」 そんな中、4月8日にダイハツは新たな経営方針を発表した。会見では、今後、小型車の事業に関しては、親会社であるトヨタが開発から認証までの責任を持ち、ダイハツはその委託を受ける形に切り替えるという。つまり、ダイハツはトヨタグループの軽自動車部門を担うという話だ。 「会見でダイハツの井上社長も軽を中心に据えたモビリティカンパニーを目指すと掲げていました。その上で、将来的には軽EVへのチャレンジを宣言。軽EV市場は日産サクラが独占している状況ですから、そのシェアを狙うのは当然です」(自動車誌幹部) 軽EV市場は風雲急を告げている。実は3月15日にホンダと日産がEVの分野での協業を検討していると発表したのだ。軽の国内シェア3位と4位がタッグを組めば一大勢力となる。つけ加えると、5位は日産とアライアンスを組む三菱だ。 ダイハツの星加宏昌副社長もこの会見で、開発を進めてきた商用の軽EVの開発の再開に言及している。 「もともと商用でお客さまのラストワンマイルを支えられるのでないかということで開発を進めてきた。それが今回の問題を受けて、いったん開発をストップしている。ニーズは非常に高いと思っているので、再発防止を徹底してやり切ることを前提に開発も再開するステップに持っていきたい」