子どもの体力伸びてない 震災ショック、運動の機会激減 液状化の内灘 奥能登も同様か
●金沢医科大・津田准教授が調査 能登半島地震の液状化被害が深刻な内灘町で、児童の体力や運動能力が伸び悩んでいることが7日、金沢医科大の調査で分かった。学校が被災して運動の機会が減るなど、日常の活動量の低下が原因とみられる。学校施設の被害が甚大な奥能登でも同様の状況が想定され、同大は子どもたちの運動機会を確保する必要性を指摘している。 調査は津田龍佑(りょうすけ)准教授(体育学)が内灘町鶴ケ丘小と、被災で同校の教室を間借りして授業を行う西荒屋小の児童を対象に実施。鶴ケ丘小の児童については、2022~24年度の全国体力・運動能力調査を用いて、50メートル走や握力、立ち幅跳び、反復横跳びなど8種目の成績の合計点で、地震前後の数値の変化を分析した。 その結果、男児約20人の地震前(22~23年度)の変化率が18・0%増だったのに対し、地震後(23~24年度)は1・2%増とほぼ横ばいにとどまった。女児約20人も同様に、地震前の12・7%増から地震後は3・1%増となった。 成長期は身長や体重の伸びに比例して運動能力の数値も上昇するのが一般的だが、調査では前年より下がった児童も見られた。鶴ケ丘小では地震後に体育館が使えず、縄跳び運動ができない状況が続き、活動量の減少が影響した可能性があるという。 ●肥満傾向児も増加 西荒屋小については、児童33人の過去3年間の肥満度の推移を調べた。身長別標準体重などから算出した肥満度が20%以上の「肥満傾向児」に判定される児童は、地震前の5人から地震後に8人に増えた。 同小の児童は鶴ケ丘小へスクールバスや親の送迎で通学しており、登下校で歩く機会が減った。西荒屋地区は液状化で宅地や道路がゆがみ、屋外で遊ぶ機会が減ったことも影響しているとみられる。 ■運動の楽しさ、伝える工夫を 調査結果を受け、津田准教授は「児童が学校で十分に体を動かせる環境を整えることが重要だ」と指摘する。その上で「被災地の教育現場では限られたスペースでも活動量を確保できる運動の考案や、体を動かすことの楽しさを伝える工夫が求められる」と述べ、家庭や地域とも協力しながら児童の運動機会を確保することが必要との認識を示した。 大規模災害時の子どもの体力低下を巡っては、東日本大震災でも、狭い仮校舎での生活や屋外活動の制限に起因した児童の肥満などが課題となったという。 今回の震災についても「多くの学校が被災した奥能登でも内灘と同様の状況は十分に考えられる」と話し、今後は石川県教委と連携して奥能登での調査を検討するとした。