沈没の豪華客船スカンジナビア「ふね遺産」認定を 沼津沖で海上ホテルやレストラン…記憶継承へ有志が活動
沼津市西浦地区の沖合に係留され、ホテルなどとして使われていた豪華客船「スカンジナビア」を、日本船舶海洋工学会の「ふね遺産」にしようと、地元有志が活動を進めている。船が沼津を離れて18年。世界中から観光客を呼び込み、地域のにぎわい創出に寄与した船の価値を認めてもらい、記憶の継承につなげる。 活動しているのは、備品や関連資料を保管、展示する資料館館長の前島希久也さん(85)、同地区でマリンレジャー施設を運営する朝倉一哉さん(55)ら8人。議論を重ねて推薦書類の内容を詰め、応募を済ませた。クルーズ船や海上ホテルとして使われたことが、ふね遺産としての認定基準「新たな経済・産業分野の創造に寄与」に合致するとみている。 前島さんと、有志の一人で信州大名誉教授の伊藤稔さん(79)が船の歴史などに関する論文を共同執筆する過程で、ふね遺産を目指す構想が持ち上がった。前島さんは「富士山とスカンジナビアという世界的な宝が二つあり、世界一の景色だった」と往時を回顧。「ふね遺産に認定され、船に関わった人や見た人に思い出してほしい」と期待する。認定記念イベント開催や歴史継承団体の設立も視野に入れる。来年6月に認定の可否が発表される。 スカンジナビアはスウェーデンで建造された。クルーズ船として世界中を航海した後、1970年から2005年まで、沼津市沖でホテルやレストランなどとして親しまれた。ホテルとして再活用を計画したスウェーデンの会社に売却、06年に改修のため同市を離れて中国・上海へ向かう途中、和歌山県沖でえい航中に沈没した。 <ふね遺産> 船への関心や誇りを醸成し、歴史的・文化的価値の継承機運を高めて、今後の船舶海洋技術の発展につなげようと、日本船舶海洋工学会が設ける制度。2017年から現在までに、沼津市戸田地区で幕末に建造された洋式帆船「ヘダ号」など全国で51件が認定されている。
静岡新聞社