渋沢栄一直筆の和歌扇面＝黒部市宇奈月温泉の延対寺荘

　黒部市宇奈月温泉の旅館「海栄RYOKANS　延対寺荘」は館内展示コーナーで、所蔵する渋沢栄一の書の公開を始めた。温泉旅館の前身である料理旅館「延対寺旅館」（高岡市）時代に同館を利用していた渋沢が女将（おかみ）に贈った和歌で、渋沢が肖像画となった新1万円札発行に合わせ、渋沢と富山県の縁や延対寺荘の歴史を広く発信しようと展示した。 　2幅所蔵しており、公開したのは「高岡にその名もたかき延対寺　歌舞のほさつ（菩薩）のいろそろへ（色揃え）かな」の直筆和歌扇面。末尾に「栄一」と記されている。 　解説を寄せた仁ケ竹亮介高岡市立博物館主幹によると、渋沢が高岡商業会議所3代目会頭を務めた木津太郎平宛てで1918（大正7）年に出した書簡に経緯をつづっており、渋沢が高岡を訪れた際に歌を贈ると女将の延対寺みよと約束し、遅れていたがようやく揮毫（きごう）し、小包で送ったとの内容になっている。 　木津は高岡生まれ、金沢育ちの世界的化学者・高峰譲吉博士の黒部川での電源開発、アルミ工業起業構想を引き継ぎ、アルミ産業発展に尽くした人物で、渋沢と親交があった。当時、延対寺旅館は北陸屈指の有名旅館と評判で、「高岡の迎賓館」としてにぎわったという。 　所蔵する書のもう1点は同内容の高さ2・3メートルの書幅で展示コーナーに収まらないため、展示法を検討している。同旅館は9月末には客室の高付加価値化改装も完了し、延対寺駿支配人（33）は「宿泊、日帰り入浴客に歴史を感じてもらいたい」と話した。 　　●9月にロゲイニング　黒部観光局 　黒部市の黒部・宇奈月温泉観光局は9日、黒部宇奈月キャニオンルート一般開放の盛り上げへ黒部峡谷鉄道（同市）とともに「湯の街ロゲイニング宇奈月温泉」を9月29日に開催すると発表した。 　温泉やトロッコ電車、水力発電などさまざまな表情を持つ黒部峡谷の玄関口で、チェックポイントを回って得点を競う「ロゲイニング」を通じ、街の魅力や歴史を楽しく学んでもらう。宇奈月温泉宿泊券（4万円相当）などの賞品を用意し、9月22日まで参加者を募集する。