木村拓哉を刑務所に入れ、脱獄させる戦略は成功したのか…ドラマ『Believe』に見る 、“本気のテレビ朝日”の狙いと誤算
ドラマ枠とキャストは保守的だった
では、何がこの結果につながったのか。また、何らかの問題はないのか。 ここまでの主なあらすじは、「橋づくりに情熱を燃やす大手ゼネコン『帝和建設』の設計者・狩山陸(木村拓哉)が、龍神大橋の崩落事故で全責任を負い、実刑判決を受けて刑務所に収容されてしまう。さらに妻・玲子(天海祐希との夫婦)から離婚届を突きつけられ、しかも彼女はがんで余命わずかであることが発覚。無実の罪を晴らし、妻と向き合うために脱獄を決意する」。 つまり当作の主な見どころは、「脱獄して無実の罪を晴らす」「陰謀を突き止めて悪を失墜させる」「末期がんの妻に寄り添う」という3つの要素。それをほぼ第1話のみで視聴者に伝えきった脚本・演出は見事であり、キャスティングなども含めて、「入口がうまくいったから中盤まで関心を引きつけ、好結果を得られている」という感がある。 しかし、中盤に入ったころから、一概に好結果とは言い切れなくなってきたのも事実。現在テレビ業界でスポンサー収入を得るために最重要なコア層(主に13~49歳)の個人視聴率がジリジリと下がり、「やっぱり中高年層向けだったか」という声があがっている。 そもそも主演の木村拓哉自身51歳であり、すでにコア層の年代から外れ、SMAPの解散以降、若年層への訴求度は厳しさを増す一方。豪華キャストも、天海祐希(56歳)、上川隆也(59歳)、小日向文世(70歳)、北大路欣也(81歳)であり、コア層を呼べる世代としては、斎藤工(42歳)と竹内涼真(31歳)くらいだった。 もともと当作が放送されている『木曜ドラマ』は、過去作の『緊急取調室』『黒革の手帖』『ドクターX~外科医・大門未知子』『未解決の女 警視庁文書捜査官』などからわかるように中高年層がベースのドラマ枠。だからこそ安定した視聴率を獲得してきたという歴史がある。 豪華キャストもそんな同枠で主演などを務めてきた中高年層にとって「おなじみの顔ぶれ」が多く、『Believe』はドラマ枠とキャストの面で「視聴率獲得で失敗を避ける」という保険をかけた保守的な作品でもあった。 ただ、コア層の個人視聴率で苦戦している一方、「配信再生数を順調に稼いでいる」という事実はどう解釈すればいいのか。今後、検証されていくだろうが、TVerの月間再生数が4.5億回を超え、その約3割がコネクテッドテレビで再生されているだけに「リビングのテレビなどを介して中高年層にも広がっている」のかもしれない。