ラム酒樽でコーヒー豆に香りづけ 館山のサルビアコーヒーがドリップパックにして売り出し(千葉県)
館山市のサルビアコーヒーが、ラム酒の香りを併せ持つコーヒー豆を売り出した。ラム酒を熟成した木のたるでコーヒーの生豆(きまめ)を寝かせ、香り付けする。ラム酒製造のペナシュール房総(南房総市)とのコラボレーションで生み出した商品で、サルビア代表取締役の鈴木将仁さん(51)は「安房の新しい地域ブランドに育てたい」と話す。 ペナシュールが1年ほどラム酒を熟成させるのに使った容量40リットルのオーク材のたるに、コーヒーの生豆10キロを入れ、1週間ほど寝かせる。豆にラム酒の香りがつき、ひいてドリップするとコーヒーの香りに彩りが加わる。 たるで寝かせる期間は、鈴木さんが6月初旬から試行錯誤を重ねて確かめた。当初、2週間ほど寝かせたところ、乾燥してうまく香りが引き立つ出来栄えにならなかったという。熟成期間中は1日に1回程度、たるを転がし、豆が満遍なくたるの中で木の表面に触れるようにかき混ぜる。 「バレルエイジドコーヒー」の商品名で、ひいた豆を11月初めから館山市内などで売り出したところ、売れ行きが予想外に好調だったという。 サルビアの鈴木さんと、ペナシュール代表の青木大成さん(51)は高校の同級生。かねてからの知り合いで、鈴木さんがかつて、ウイスキーのたるでコーヒーの生豆に香り付けしたことがあり、ペナシュールとのコラボを2人で考えていたという。 今回、コーヒー豆の熟成に使ったたるは、スペインでシェリー酒の貯蔵に使っていたものを、青木さんがラム酒造りのために取り寄せた。
今回の試行錯誤では、想定外の“収穫”もあった。コーヒー豆を熟成させた後のたるで再びラム酒を熟成させると、ほのかなコーヒーの香りがつき、こちらも従来のラム酒とは違った香りが楽しめるものに仕上がった。ペナシュールの青木さんは「焙煎(ばいせん)した豆ではないのに、見事にラム酒にコーヒーの香りが移る。アルコール分が揮発する時に何らかの反応が起きて、たるの木にコーヒーの香りが付くのかもしれない」と言う。 青木さんも、コーヒー豆の熟成で使ったたるのラム酒を、自社の新たなブランドで商品化につなげる考えだ。7月に大阪で開催された国際的な「食」に関する展示会に出品したところ、コーヒー豆、ラム酒ともに外国の参加者に好評で、「輸出の予定はないのか」などの問い合わせがあったという。 鈴木さんは「(青木さんは)耕作放棄地で栽培したサトウキビを原料にしてラム酒を造っている。コーヒーと合わせ、この地域で新たなものを生み出せたことがうれしい」と話し、コーヒー豆、ラム酒ともに安房の新たな名産品として育てていきたい考えだ。 (斎藤大宙) ◇ ◇ ◇ バレルエイジドコーヒーは、ひいて粉にした100グラムパックが1296円、10グラム入りのドリップパックが4個入り1000円。館山市や南房総市の主な道の駅で販売している。JR館山駅近くのサルビアコーヒーの店舗でも1杯693円(いずれも税込み)で味わえる。