10年ぶりの春 勝負強さ光る常葉大菊川、16年ぶりV狙う センバツ出場校紹介
ピンストライプのユニホームが10年ぶりの春を迎える。5回目の出場となる常葉大菊川(静岡)の主将、平出奏翔(2年)は「出るからには優勝を目指したい」と意気込み、フルスイングの力強い打撃で頂点に立った2007年のメンバーだった石岡諒哉監督は「うれしいというよりは、身が引き締まる」と新たな気持ちで甲子園の舞台に臨む。
1年生左腕が躍動
常葉大菊川は昨年夏の県大会で優勝候補と評されたが、新型コロナの感染拡大もあり4回戦で敗退した。この悔しさをバネに、昨秋は快進撃を見せた。 バッテリーを中心に守備からリズムを作り、勝負強さを発揮してきた。立役者となったのは1年生左腕の久保綾哉。静岡県大会では準々決勝から3試合無失点。東海大会でも津商(三重)との初戦で1点差を守って完投し、準決勝で加藤学園(静岡)を完封。「自信がついた」とうなずいた。 制球難だったという久保はスクワットなどで下半身の強化に励み、制球が安定したという。甲子園でもスライダーとツーシームを内外角に投げ分け、打たせて取る投球を目指す。
攻守の要は強肩捕手
その久保と、エースナンバーを背負った2年生右腕の福住柚稀を、強肩捕手の鈴木叶(2年)がリードする。鈴木叶は秋季大会の全試合で4番に座る攻守の要。4割超えの打率で打線を引っ張った。東海大会では抑えられたが、3番の岩崎匠悟(2年)が準決勝で先制本塁打を放つなど、前後の打者たちがカバーして勝ち上がってきた。鈴木は「全国のいい投手を相手に、打ち勝つことはなかなかできない。ここぞという時に打つために、ひたすら振り込んでいくしかない」と勝負どころを逃さないことを意識する。
投打とも勝負強さが増したシーズンだったが、東海大会決勝は東邦(愛知)の好投手・宮国凌空(りく)(2年)に2得点に封じられた。2007年選抜で捕手として優勝を経験した石岡監督は「経験豊かな全国の投手に打ち勝つため、打撃を基礎から見直したい」と気合を入れ直していた。 安西叶翔(日本ハム)を擁した2022年夏の静岡大会ではチーム内に新型コロナウイルスの感染が広がり、戦力を整えられずに敗退した。あの無念は、念願の舞台で晴らす。
2007年春に優勝
常葉大菊川は、菊川市半済にある私立中高一貫校。創立は1972年。教育目標に「創造」「礼節」「自立」を掲げ、人間教育や大学進学教育、異文化理解教育に力を入れる。 生徒数は2023年1月1日現在、1014人。普通科は「普通コース」、「文理コース」、中高一貫の「一貫Sコース」に分かれる。また美術・デザイン科も設けている。 野球部は83年に創部。甲子園は春4回、夏6回出場し、2007年春に優勝、08年夏は準優勝した。22年のプロ野球ドラフト会議では、3年生の安西が日本ハムから4位指名、OBの奈良間大己内野手が同5位指名をそれぞれ受けた。 ソフトボール部や陸上部も、全国大会に出場した経験がある。