<小新井涼のアニメ考>最終回 10年で大きく変わったアニメ界
そうして10年以上続けさせていただいた当コラムですが、私事ながら実は生まれて初めて連載を持たせていただいた場所だったのもあり、コラム執筆のノウハウについても、連載開始時からずっと担当していただいた編集長から沢山のことを学ばせていただきました。
中でも特に印象に残り、今でも個人的に執筆の指針としているのが、“誰か一人を悪者にしない”という執筆の方向性です。例えば、何かアニメ関連で争いや対立が起きた際に、人々の怒りや悲しみを扇動し、原因とされる個人や対立のどちらか一方を名指しでさらし上げ、怒りに任せて責め立てるのは簡単ですし、ネットではそういう記事の方が数字を取れることもあります。しかしそうした際に、誰か一人や一方だけを悪者にするのではなく、一歩ひいて、対立するそれぞれの立場や意見から、その事件や争いの全貌を捉えて文章化することもできるのだと、この連載を通して学ぶことができました。
きれいごとのように言われてしまえばそれまでですが、炎上やネット上での論争も絶えない今だからこそ、こうした見方は、そもそもアニメの楽しさを伝えることを原点としている自身のコラム執筆時の指針として、今後も大切にしていきたいと思っています。
そんな当コラムの一番の特色としては、筆者の年代・性別から、この10年強のアニメ界を見つめ続けてきたアニメコラムは他に無かったという点があげられるかもしれません。実際に、初期の内容を振り返ってみると、“隠れオタク”という今ではめっきり使われなくなった言葉や、“今後はソシャゲ原作のアニメが増えていくかも”といった今では当たり前となった現象も、当時のリアルタイムの記録として残っていました。こうした記録は、筆者の独断と偏見は大いに混じっているものの、2010年以降のちょっとしたアニメ史として、手前味噌ながらそれなりに資料価値もあるのではないかと思っています。いつかチャンスがあったら、改めて編纂のうえ書籍化などが出来たらいいなと密かに思っているのですが…編集長いかがでしょうか。