吃音芸人「僕を見て笑って」 ドッキリ企画が物議、「表現」か「嘲笑」か #ニュースその後
世界的歌手になった人も
吃音がありながらも、お笑いや音楽など表現活動で独自の表現方法を確立し、成功した人もいる。 米国の歌手、スキャットマン・ジョンさんは吃音を逆手にとった独特の歌い回しで観客を魅了。デビューアルバムが世界中でヒットし、日本でもテレビCMに出演した。 落語家の三代目三遊亭円歌(えんか)さんは吃音の表現を組み入れた演目「授業中」で人気を博した。
お笑いの世界では異色の存在
インたけさんのスタイルは、たどたどしい口調で失敗談や自虐ネタを披露するもので、シュールで独特の世界観がウリだ。漫才やコントなどで流ちょうさが求められるお笑い業界では、異色の存在だ。 自身の芸風については「他人の吃音をからかうのではなく、吃音をもつ自分を笑いの対象にしています」と強調する。 今回の番組を巡る騒動について、TBSは毎日新聞の取材に対し「(番組内容について)吃音、あるいは吃音当事者をからかう意図は全くない」と説明した上で「番組制作において、発話障害を理由に出演の可否を判断することは一切ない」とした。
インたけさんの騒動、何が問題だった?
では、何が問題だったのか。「制作側、出演者、抗議者の誰が正しく、誰が間違っていたのかという問題ではありません」。こう指摘するのはお笑い評論家の西条昇・江戸川大教授だ。 番組について「ドッキリという企画の性質上、どうしてもだまされた人の反応をからかい、楽しむ内容になりがちです」と指摘。「ドッキリ中に症状が出たことで、吃音が周りからからかわれている、ばかにされていると感じる人がいたのでしょう」と話す。
「強さや潔さが感じられるから」
近年は、ひとり芸ナンバーワンを決める「R―1ぐらんぷり」で2018年に優勝した視覚障害のある漫談家の濱田祐太郎さんをはじめ、吃音のみならず自身の障害を芸に取り入れて活動する人が増えつつある。 西条教授は彼らの多くが批判されず、共感されるのは「自身の障害を受け入れ、その上で芸のネタにするという『強さ』や『潔さ』が感じられるからです」と言う。 西条教授は「コンテンツが『笑い』として受け入れられるためには、作り手と受け手の共通理解が不可欠」と強調。「障害が原因で、表現活動の幅が狭まることは望ましくありません」としつつも「制作側が十分に障害の特性を理解し、出演者とともに納得のいくコンテンツをつくることが必要です」と語った。【遠藤大志】
※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。