脅してもすかしても動じぬ台湾、加速する中国離れ 焦る習近平氏、包囲網演習は常態化【中国の今を語る④】
習指導部には民進党の長期政権が続き両岸交流が遮断されれば、中国離れが加速するとの危機感がある。4月に対中融和路線の野党、国民党の馬英九元総統の訪中を受け入れ、習国家主席自ら若者交流の必要性を訴えたのはその表れだ。頼政権との対話は拒否しても、民間交流は時機を見て段階的に再開させるのではないか。 習指導部が台湾融合を図るために打ち出してきた優遇政策はうまくいっていない。中国に行く若者が少ない上に、経済低迷で大陸の魅力が低下しているためだ。国民党への厚遇は民進党を揺さぶる狙いがあるが、台湾民意を引き留めるため中国が国民党を必要としている側面もある。習指導部は馬氏を2005年に共産党の胡錦濤総書記(当時)と60年ぶりの「国共トップ会談」を行った国民党の連戦主席(同)の後継者と位置付け、中台の「架け橋」として年に1度の訪中を定例化させる可能性が高い。 ▽小さき者の知恵 ただ国民党は台湾の若者に人気がなく、党内部でも馬氏訪中には異論がある。国民党を通じた交流の効果は「やらないよりはいい」という程度で限定的だ。
中国は平和統一を目指すとしながら武力行使の可能性を放棄していない。現時点では「雷声大雨点小(雷鳴は大きいが雨は少ない)」で、かけ声に過ぎないものの備えは必要だ。 中国は大きく、台湾は小さい。頼氏には中国につけ込まれないよう「小さき者の知恵」が求められる。 × × × 林泉忠氏(りん・せんちゅう) 中国・アモイ出身。1978年に香港に移住。1989年に訪日し、2002年に東京大大学院で法学博士号を取得。琉球大准教授や台湾中央研究院副研究員、中国の武漢大国際問題研究院教授などを経て、2024年4月から東京大東洋文化研究所特任研究員。専門は国際政治学で、中台関係のほか沖縄・香港・台湾のアイデンティティーについても研究。