【親族なき高齢者】安心への支援充実を(11月9日)
配偶者や子どもなど3親等以内の親族のいない「身寄りのない高齢者」が、2050年に全国で現在の約1・5倍に増えるとの試算が先ごろ発表された。入院や施設入居時の保証人が確保できない事例が増える懸念がある。誰もが安心して老後を過ごせるよう、官民で支援体制を充実させる必要がある。 日本総合研究所の試算によると、身寄りのない高齢者は、子どもの未婚などの影響により現在の286万人から2050年時点で448万人に増加する。高齢者の9人に1人程度に相当する。3親等以内の親族がいても日頃の交流が希薄な場合も想定され、該当者はさらに増えるとみられている。 こうした高齢者のため、民間事業者による終活支援サービスが用意されている。通院時の付き添いや入院、介護施設への入所時の身元保証、葬儀、遺品整理などを有料で担ってくれる。 ただ、解約時に預託金の返還に応じてもらえないといったトラブルが国内で増加傾向にある。国民生活センターによると、終活支援サービスに関する相談件数は2020(令和2)年度に114件だったが、昨年度は355件と3倍以上に増えた。県消費生活センターには「信頼できる業者はどこか」「利用手続きはどうすればよいか」などの問い合わせが寄せられている。
静岡市は住民の相談が相次いだのを受け、「市終活支援優良事業者認証事業」を全国の自治体で初めて4月に始めた。認証を受けたのは1事業者だが、年度内にさらに増える見込みという。本県の市町村も今後の需要を見据え、静岡市の事例を参考に認証制度の導入を検討してはどうか。 県内の単身世帯は2020年10月1日時点で24万5335世帯に上る。総世帯の33%を占め、10年前に比べて7ポイント増加している。各市町村は民間企業などとも連携し、高齢者の見守りを進めているが、核家族化が進む中、家族の役割を補う機能のさらなる充実は欠かせないだろう。 厚生労働省は、身寄りのない高齢者への対応策を含む地域共生社会の在り方に関する中間取りまとめを年度内に予定している。地域間で支援にばらつきが出ないよう法制化を含めた対策を速やかに実行すべきだ。(神野誠)