あいまいな登山道の管理責任 危険箇所の修復進まず
登山道の管理責任はだれにある――。山岳関係者や行政が長年悩んできた登山道の管理問題などが27日、松本市で開いた長野県の「山岳環境連絡会」で取り上げられました。登山道は一部を行政が管理しているものの、多くは管理者の法的な定めがなく、山小屋などが整備しているのが現状。登山者を案内する道標についても対応は地域によりまちまちで、海外からのインバウンドの拡大も控え、いずれも明確な位置づけが迫られています。 【写真】「犬連れ登山」は是か非か “犬お断り看板”の実態を探る
危険箇所の解消率は30~40%
連絡会は山小屋関係者や長野県、環境省、森林管理局、市町村、信大などの学識経験者らで構成し、この日は本年度で3回目の会合。 長野県は自然公園グレードアップ構想として、これまでの規制偏重の自然環境対策から水準の高い山岳高原観光地づくりを目指しており、登山道などのハード面、インストラクター養成などのソフト面、協働型の環境管理など体制面などそれぞれの整備充実、見直しを進めるとしています。 このうち登山道の整備や管理はかねての課題。というのも、多くの登山道は管理責任がはっきりしていないため、誰が責任を持って整備するのかあいまいなままです。県によると県内の登山道の管理形態は「自然発生的で、管理者が不明確な道」のほかに、環境省や林野庁所管、市町村管理、地域のボランティアなどの開設・管理などさまざま。北アルプスなどでは山小屋が雨で流れた登山道を補修したり、一部崩落した場合でも、山小屋スタッフが何日もかけて復旧する例もあります。 あいまいな「管理責任」もあって、長野県が2013(平成25)年度に実施した山岳環境の緊急点検では、県内に登山道の危険個所が300か所もあることが判明。これまでに修復などをしてきましたが、解消率は30~40%ほど。中央アルプスの場合は166か所の危険個所のうち60か所の解消にとどまっています。
道標のデザイン統一なども検討
グレードアップ事業を進めるため、長野県は県費、市町村負担などを含め本年度に約7000万円を、2017年度予算でもほぼ同額を投じて県内の八ケ岳、北ア、南アなど7山域で登山道整備を進め、2019年までに300の危険個所の解消を目指す方針。 ただ、当面の予算措置とは別に、将来にわたって誰が修復や管理をしていくのかは定まっていません。このため連絡会では県側が「関係機関などが協働型で一緒に取り組んでいくのが望ましい。各山域で協働して問題に取り組んでほしい」と提案しました。 登山道とは別に、登山者を案内する道標のデザインや素材についてもばらばらのため、統一する方向が望ましいとして検討。ただ、道標の設置場所や色についても異なる意見があり、今後の検討課題に。会議では「安全のためには分かれ道のすべてに設置したり、長いルートの場合は途中に幾つか設置して心理的に安心してもらうという考え方もあるだろうが、それほど必要なのかという異論も出るかもしれない」という指摘もありました。
---------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説