「え、電車に轢かれたのに…」伝説の寿司職人『将太の寿司』大年寺三郎太の“調理以外”の「凄すぎエピソード」
■味のためならマラソンもやる! 35キロの距離を走破
全国大会を勝ち上がり、念願の将太との対決が始まると大年寺はさらにパワフルになっていく。4回戦第3課題に「牛肉の寿司」を指定された大年寺は、りんごを食べて育てられた最上級の牛肉を手に入れる。 考えうる最高の素材を入手した大年寺は、ある荒行を敢行する。それは「牛肉を探した兵庫県三田市から試合会場の明石市までマラソンで移動する」という途方もないものだった。その距離は作中で35キロといわれており、とてもじゃないが大事な試合前に走る距離ではない。 原作では大年寺が渋滞の車道を駆け抜ける描写があるのだが、「これが大年寺だ……」としか言えない迫力がある。さらに会場に到着した際も息ひとつ切らさず、そのまま勝負を始めたのもさすがだ。 大年寺がここまでした理由は、もちろん味のためである。彼はあらかじめ牛肉の棒寿司を作っておき、牛肉の上に昆布をのせ縄で包んでから35キロマラソンを決行した。すると走る振動で牛肉と酢飯がなじみ、味わいの一体感が増すというのだ。完璧な食材に満足せず、調理法にも細心の注意を払った大年寺は見事に「牛肉の寿司」対決を制した。 それにしても、このやり方で本当に牛肉のお寿司は美味しくなるのだろうか? 35キロを走っても息ひとつ切らさない寿司職人が現実にいたら、ぜひ注文したいものだ。
■「凍死」は「闘志」で予防? 12月の海で大ダコと大格闘!
次のエピソードも、全国大会4回戦での将太との対決から紹介しよう。会場の明石市にちなんだ「タコの握り」対決では、最高のタコを調達できるかが大きなポイントとなった。対戦相手の将太は明石名物のマダコが旬ではないと見抜き、小さくても味がいいイイダコを選ぶ。 一方、大年寺は通常とは旬が異なるマダコ「ワタリダコ」を探すのだが、その方法が凄まじい。12月の寒空でふんどし一丁になり、40メートル以上の断崖絶壁から大海へ飛びこむ。常人ならこの時点で命の危機だが、彼はさらに海中で重さ10キロはあろう理想のワタリダコを見つけだし、素手での捕獲を試みるのだ。 大年寺が海に飛び込んでから約5分。これ以上は後遺症が危惧されるギリギリのタイミングのところで、彼は地上へと上がってくる。その手には、海中で制圧した巨大なワタリダコが握られていた。こうして大年寺は将太のイイダコを上回るタコを手に入れるのであった。 と、ここまででも壮絶すぎるが、本当に注目すべきはこのあとだ。ワタリダコとの激闘を制した大年寺の全身は真冬の海水で濡れており、見るからに凍えそうな状態だった。しかし彼が海から上がるや否や、体中の海水がたちまち渇いていくではないか。 その様子を、とあるキャラがこう語る。「か…身体から発する闘気で……海水に濡れた身体が見る間に乾いていく…!!!!」と。 大年寺が冬の海に飛びこんだのも、すべては将太と納得いく勝負をするため。宿敵との対決を前にたぎった彼の体は、海水を蒸発させるほど熱くなっていたわけだ。大年寺がすごいというべきか、この超人をここまで本気にさせる将太がすごいというべきか、なんとも悩ましい。 大年寺にはほかにも「寿司を握る手が速すぎて腕が6本に見える」「巨大ウツボと海中で格闘し、素手で仕留める」といった超人エピソードがあり、登場するたびに読者を驚かせたキャラだ。これで寿司職人の技量も最高クラスなのだから、もはや手がつけられない。 そんな大年寺に唯一土をつけたキャラこそが、体力は人並みでも寿司への情熱は誰にも負けない将太だった。寿司勝負の命運を分けるのは人外の体力ではなく、寿司にかける想いなのかもしれない。
ハチミツ