和の建築と古代ギリシャが出合ったら…?銘木をあぶった丸太がずらりと並ぶ「終の棲家」がスゴい理由
「終の棲家」として建てられたこの家があるのは、三重県のとある町。東京都を拠点に活動する建築家・中倉康介さんが設計を手掛けました。「日本の木造軸組ならではの美しさを引き出した家に」そう考えた建築家の中倉康介さんがイメージのもとにしたのは、古くからヨーロッパの建造物に見られる、”コロネード”という建築様式の、丸い柱が並ぶ空間でした。 【写真集】古代ギリシャの建築様式を和風に解釈すると…?炙り丸太のあるユニークな家 緻密なデザインと職人技が結実した贅沢な木の住まいです。
「和のラグジュアリー」をまとう木の住まい
中庭の水盤を囲むように登り梁や柱が連なる、丸太の架構を現したこの住宅は、地元で長年暮らす住み手の「ときに親戚や友人を招き、自然を感じられる終の棲家に」という要望が具現化されたものです。 〈写真〉内装は、左官壁のライトグレーとウォールナット羽目板のダークブラウンがベース。床のオークは、含有するタンニンを変色させる鉄媒染加工が施された材。濃淡のグラデーションが表情をプラス。ダイニングキッチンからオペラや映画を鑑賞する“シアター”、ライブラリーまでひとつながり。造作のキッチンには視界の邪魔にならない昇降式の換気扇が組み込まれている。
古代ギリシャの“コロネード”が着想源
建築家の中倉康介さんは、そのコンセプトを「古代ギリシャの“コロネード”(列柱廊形式)を木造で再構成した家」と語ります。「サン・ピエトロ大聖堂前の広場が有名ですが、コロネードには人が集い、文化が育まれてきた歴史があります。丸い柱が並ぶ空間には人を惹きつける魅力があります。近年の木造住宅は構造を隠すことが多いですが、美しい軸組を見せる建築こそラグジュアリーなのではと考えました」 近隣に幹線道路が走るため、プライバシーを守り自然を呼び込む中庭プランに。構造には銘木・北山杉の丸太を使用。濃い茶色に見えるのは、磨き丸太の表面を火で炙っているためです。すり鉢状に傾斜した屋根を支えるのは、建物の外周と内周に配され“炙り丸太”。表面に炭化層が形成され、木が長持ちするようになります。 寝室や水回りを除き、ほぼ一室のように体に負担なく暮らせる間取り。天井には水のゆらぎが映り、軒先に伝う雨の雫も風流に。トンボが飛び交う頃、住み手は友人と食事を楽しんだといいます。自然に寄り添い、四季の移ろいが鮮やかに感じられる趣深い木の住まいを叶えました。 〈写真〉建物は南側の中庭に開放したコの字形。内勾配のすり鉢状の屋根で光を室内に導く。「植栽が多いとメインテナンスが心配」という住み手に中倉さんは水盤中心の庭を提案。水盤にせり出した岡山産の白石島御影石の下に吐水・排水口があり、水は自動で循環する仕組み。洗い出し仕上げには地元三重の真珠が一二三石のパターンで埋め込まれている。築山の木はモッコク。