肛門を石けんで洗うのはNG、ウォシュレット「強」はダメ…「肛門トラブル」間違いだらけのケアに注意
肛門を「石けん」で洗うのは間違いだった!
「お尻の穴がかゆい、ムズムズして違和感があるという症状で悩んでいる男性は一定数います。肛門のかゆみの多くは、間違った肛門の洗い方が関係しています」 【イグノーベル賞!】座って自分自身で「肛門」に内視鏡を…!? と話すのは、平田肛門科医院 副院長の平田悠悟医師。1935年から約80年続く肛門科医院の4代目で、痔をはじめとする“お尻”の治療のプロフェッショナルだ。 「お尻のかゆみの多くは『肛囲掻痒症(こういそうようしょう)』といわれる症状です。原因は複数ありますが、みなさんがやりがちなのが石けんで肛門を洗うこと。 人の皮膚は弱酸性に保たれていますが、石けんやボディーソープの多くはアルカリ性のため、皮膚のバリア機能が損傷してしまい、肛門部分の皮膚が荒れやすくなるのです。その結果、かゆみやムズムズにつながります」 かゆみがあると「不潔にしているからでは?」と心配になり、余計にゴシゴシ洗ってしまう。それが逆効果となり、どんどん症状が悪化するという。 「お尻の穴をかきすぎて慢性化すると、皮膚がダメージを受け続けて肛門が白くなることがあります。長年かゆみを我慢して“白い肛門”になってから受診される方もいます」 そのほかにも、下痢や便秘といった便の状態、お尻に対して物理的な負荷がかかることも原因となる。 「下痢の場合は、便が水っぽいためアンモニアや塩分が肛門のシワの部分に残りやすくなったり、アルカリ性の消化酵素が付着したりしてかゆみに直結。便秘の場合も、便がアルカリ性に傾きやすくなります。 また、排便後にトイレットペーパーで強く拭きすぎる、水勢の強すぎるウォシュレットを長時間使うことも、物理的に肛門の皮膚を損傷させます。かゆいからといってかき続けていると、次第にかゆみの神経が皮膚表面に近くなり、ちょっとの刺激でかゆみが起こりやすくなり、慢性化してしまうのです」
肛門のかぶれと思ったら“がん”…悪性腫瘍が潜む可能性も
石けんや便が原因ならば、それをやめたり改善したりすることで快方に向かう。しかし中には、「単なるかゆみ」と楽観視できないようなお尻や腸の病気が隠れている場合がある。それが「痔」や「直腸がん」だ。 「かゆみを訴えて来院される方の中には、いぼ痔(内痔核)や切れ痔(裂肛)のある患者さんがいます。痔を自然治癒力で修復しようとする過程で分泌物が出るのですが、それが流れ出てくることで皮膚にかゆみが起こります。 また、ケースは少ないですが、一見皮膚のかぶれのように見える症状が、悪性腫瘍の直腸がんや肛門がんだった患者さんもいます。そのほか、真菌によって起こる感染症のカンジタ、大腸の炎症性疾患の潰瘍性大腸炎など、病気によってもかゆみが発生する可能性があります」 では、お尻のかゆみが続くときは、どう対処したら良いのだろうか。お尻の症状は一度治っても繰り返すことがあり、こっそりと市販薬を常備して使っている人も多いだろう。 「市販薬には大きく分けてステロイド配合タイプとノンステロイドのタイプがあります。ステロイド配合タイプは長期の使用は避けた方が良いでしょう。ステロイドなしの抗ヒスタミン薬はかゆみを抑える薬で、効果があるならば使用を続けても問題ありません」 市販薬を使ってもかゆみが長期にわたって繰り返されている、かゆみが強くなってきた、かゆみ以外の気になる症状があるといったときには、我慢せずに専門医に相談するのが望ましい。 「1週間経っても症状が改善されない場合は、迷わず医師に相談してください。肛門科、もしくはお近くにない場合は皮膚科でも診察してくれます。肛門科では、肛門鏡という鏡で肛門の中を見て、粘膜の状態や切れ痔、いぼ痔、がんなどがないかを確認。必要な場合は、大腸内視鏡検査を行います。原因を突き止めて病名を診断し、それに合う治療を進めていきます」