肛門を石けんで洗うのはNG、ウォシュレット「強」はダメ…「肛門トラブル」間違いだらけのケアに注意
ウォシュレット「強」はNG!「弱で10秒」を目安に
「お尻のトラブルのほとんどは生活習慣が原因」と断言する平田医師。そのため、かゆみやムズムズが重大な病気ではなく肛囲掻痒症の場合、食事や生活を少し見直すだけで症状が和らぐという。 「まず大事なのは、石けんやボディーソープを使って肛門を洗わないこと。肛門部分はシャワーを当てながら手でやさしく洗い流す程度で十分です。そもそも肛門周辺は免疫機能が高く、多くの常在菌によって守られています。石けんの使用をやめただけで症状が改善する人もいます。 排便後のウォシュレットは『弱で10秒以内』を目安に。また、肛門部分の通気性も大切です。かゆみ予防にはボクサーパンツよりもトランクス、化学繊維よりも綿素材がおすすめです」 いぼ痔や切れ痔は腰周りの冷えが原因になることがあり、腹巻を巻く、腰周りをカバーできる服装にするなど、腰を冷やさないことが重要。そして食生活でカギになるのは腸内環境を整える食事だ。 「野菜やイモ類、豆類などいろんな食材から食物繊維を取り、するっと出る“バナナ便”を目指しましょう。白米にもち麦や寒天を混ぜる、白いパンより全粒粉パンを選ぶなど、いつも食べるもので食物繊維をプラスする工夫を。肛門トラブルがあるときは、下痢を引き起こすお酒は控えてください。 食事のほかには、睡眠時間が少ない、座りっぱなしの時間が長い人もお尻にトラブルが起こりやすくなります。デスクワークの人は、家やオフィスでも1時間座ったら10メートル歩いて下半身の血流をスムーズにしましょう」 口から食べた物を消化・吸収して、不要になったものを排出する肛門。胃や腸を経て、最後に“排便する”という非常に大きな役割を担っている。 「当院の調査で、お尻にトラブルが起きてから病院を受診するまで『平均7年』かかっていることがわかっています。それくらい症状はあっても病院に行く人が少ないのが現状です。しかしご説明したように、がんやそのほかの病気の可能性もゼロではありません。 ひどくなってからでは治療期間も治療費もかかります。“かゆみ”“ムズムズ”くらいの小さい症状のうちに、診断がつけば、割と早く治ります。人生100年時代といわれますが、それは肛門も100年使うということ。お尻からご自身の健康を見直すきっかけになってほしいです」 人に相談するのは恥ずかしいけれど深刻なお尻のトラブル。間違ったケアをやめて適切な対処をすれば、小さなかゆみを気にすることなく今よりもっと快適に過ごせるはずだ。 平田悠悟(ひらた・ゆうご) 平田肛門科医院・副院長。医学博士。1935年に肛門科専門医院として開設、80年以上の歴史を持つ平田肛門科医院の4代目。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向、大腸肛門病の専門医として臨床経験を積む。2022年より同院の副院長として勤務。日本外科学会専門医、大腸肛門病学会専門医(肛門領域)、日本消化器内視鏡学会専門医。 取材・文:釼持陽子 編集・ライター。1983年、山形県生まれ。10年間、健康情報誌の編集部で月刊誌・Webメディアの編集に携わったのちフリーランスに。現在はヘルスケア・医療分野などを中心に、医師や専門家の取材、企画、執筆を行う。
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