【独自試算】ガソリン補助金終了後の都道府県別「値上がり」ランキング!3位宮崎県、1位は?
表1は政府の補助金が完全に終了した際の都道府県別のガソリン価格を試算したものだ。現行(直近)価格は、24年3月末~6月10日の「石油情報センター」の週価格を平均したものである。補助金なし価格は、同期間に石油元売りなどに支給された補助金単価の平均を加えたもので、全国平均で202円/リットルとなった。 しかし物価は地域ごとに異なることから、総務省の消費者物価地域差指数(小売物価統計調査〈構造編〉22年結果)を使って、各都道府県の消費者が生活の中でガソリン価格をどの程度に感じるかを「実感価格」として試算し、高い順にランキングした。 実感価格が210円/リットルを超える県が7県もあり、同額トップの長野と鹿児島では217円/リットルとなった。鹿児島に宮崎、大分、長崎と続き、九州は上位に集中することが分かった。 なお、一般的にこうした統計ではガソリンが高くなる理由として離島の影響が出ているものと思いきや、長崎と鹿児島はそうした影響をほぼ除いた市単位で見ても、やはりトップ5に含まれている。 そして、九州で唯一製油所が立地する大分(ENEOS大分製油所)が4位にランクインしている。大分の価格の高さは、ガソリンスタンドが多く、1カ所当たりの販売量が少ないのが原因だと説明されることが多い。 しかし表2の通り実際は、1カ所当たりの販売量は九州の中では福岡、佐賀に次いで多く、自動車1台当たりの販売量は熊本と比較すると30%程度も多い。説明は大分のガソリンスタンドにとって都合の良い“言い訳”であることが明白だ。自由な価格競争の激しい熊本と、販売業者の間で、競争を抑え込む力が働いている地域の違いである。その典型的な例が、価格看板だ。大分や高価格地域は「888」看板が非常に多く、実質的に“消費者に価格が見えない”仕組みにしている。 ランキングに戻ろう。逆に200円/リットルを割っているのが、大市場を抱える神奈川、東京、千葉、埼玉、兵庫、宮城、北海道だ。このうち北海道(出光興産)、宮城(ENEOS)、千葉(コスモ石油、出光ほか)神奈川(ENEOSほか)には製油所が立地し、転配送費がかからないことも安さの要因である。また、以前からガソリンの価格競争が激しい地域で知られる埼玉、岩手、徳島は、そうした事情が本ランキングでも強く反映されている。経済の原理原則として市場競争がいかに重要なカギとなるかを端的に示している。 なお、過去にガソリンが最高値を付けたのは08年8月4日、全国平均185.1円/リットル(193.9円/リットル:以下カッコ内は現在の消費税率に換算した価格)だった。県単位での最高値は長崎県の193.5円/リットル(202.7円/リットル)であり、次いで大分県の190円/リットル (199円/リットル)。逆に安かったのは栃木県の179.2円/リットル(187.7円/リットル)、山形県の179.5円/リットル(188円/リットル)だった(注:消費税率調整なしだと過去最高額は23年9月の186.5円/リットルとなる)。 つまり、このランキングから分かる通り、ガソリン補助金が終了した際には過去の最高値を更新することになる。 ガソリン補助金がなくなると、家計の支出はいくら増えるのか。『【独自試算】ガソリン補助金終了で家計負担が増える都市ランキング!3位富山市、2位山口市、1位は?』にて、もう1つのランキングを紹介しよう。
小嶌正稔