「女性部下との接し方に悩んでいます」精神科医・名越が一喝! 大人の人生相談室
精神科医であり、テレビやラジオのコメンテーターとして活躍する名越康文さんが、OCEANS世代の人生相談に答える本連載。
今回は、職場の人間関係にまつわるお悩みを解決します!
【Question #02】異性の部下との上手な接し方がわかりません
職場に女性の部下が増えました。性別に関わらず、きちんと向き合いたいのですが、どうしても注意や叱責がしにくく、コミュニケーションを取るのが難しいと感じてしまいます。どう接すればよいでしょうか?(48歳・東京都)
【Answer】相手が誰であれ、まずは「話を聞く力」が大切です
私の勝手な類推にすぎませんが、もしかしたら女性に対して、何か心にトラウマのようなものがあるのでしょうか? 女性が集団でいると脅威を感じてしまう、ということなら過去の経験が現在に影響を与えてしまっている可能性が濃厚です。 この短い文章からすべてを読み取ることは到底できないのですが、注意や叱責がしにくいことと、コミュニケーションの難しさを並べて書いておられるのも、心理学的には気になるところです。 もう少し端的に申し上げますと、“注意や叱咤がしにくく、コミュニケーションを取るのが難しい”という文脈からはもう女性との臨戦体制といいますか、結構大変な緊張関係を前提にしてしまっていることが垣間見えるわけです。 その時点ですでにコミュニケーションという言葉に対するイメージがかなり狭く、固まってしまっているようにもみえるのです。
コミュニケーションとは相互的な交流のことです。決して一方的な関係ではありません。 ということは、コミュニケーションにおいては相手の話を聞くということも大切な要素です。「そんなことはわかっている」と言われてしまいそうですが、意外に私たちはこの当然なことができないのです。まさに“言うは易し行うは難し”。 この「話を聞く」ということが実は相当難しい。そしてコミュニケーションという意味は我々の中でいつの間にかすり替わり、「いかに効率的に相手にいうことを聞かせるか」という意味になってしまっている気もします。 これではいくらにこやかに落ち着いて話そうとしても、相手とはすでに対立的な関係になっているため、体も顔もこわばって大きなストレスを抱えることになってしまいます。 では、なぜ我々は相手の話を聞こうとしないのでしょうか。