生産者「大ショック 嫌な予感はあった」養鶏場で今季県内初の高病原性鳥インフルエンザ疑い事例 県内関係者ら被害の拡大を懸念、警戒強める 鹿児島県出水市
出水市高尾野の養鶏場で今季県内初の高病原性鳥インフルエンザの疑い事例が出た19日、関係者に緊張が走った。全国的に養鶏場での発生が最も早かった今季は、過去最多26道県84例に上った2022年季に匹敵するペースで推移する。県内では陽性なら5季連続と発生が常態化し、関係者は被害の拡大を懸念する。 【写真】トラックから降ろされた資機材を運ぶ作業員ら=19日午後7時21分、出水市高尾野町大久保
出水市は19日夕、緊急庁内会議を開き、20日からツル越冬地一帯で路面消毒を毎日実施し、通行車両の有人消毒を始めることを確認。19日夜には、高尾野体育館に防護服など防疫用資機材が次々運び込まれた。 県家畜防疫対策課によると、発生が疑われる養鶏場は、ツル越冬地のすぐそばに立地。藏薗光輝課長は「野鳥の多い地域で、対策をかなり徹底していたと聞いている」と明かす。 全国で過去最多の被害が出た22年季は、11月18日に出水市高尾野で県内1例目が発生し、計13例に上った。今季は全国で当時並みのペースで発生が相次いでおり、流行が心配される。 同市内の70代生産者は「(疑い例が出て)大ショック」と落胆を隠せない。18日にナベヅル3羽の死骸で簡易陽性だった発表があり「嫌な予感はあった。ウイルスは目に見えず、どこで発生してもおかしくない。年々、気が休まらなくなっている」と漏らす。 肉用鶏を生産加工する鹿児島くみあいチキンフーズ(鹿児島市)の下坂元健一品質管理室長も「全国で発生が相次ぎ警戒していた。さらなる対策強化を図りたい」と気を引き締めた。
家畜伝染病を研究する北海道大学大学院の迫田義博教授(ウイルス学)は「今季は全国に複数ある全ての渡り鳥のルート上で、鳥インフルが多発している」と指摘。過去に発生のあった農場周辺は特にリスクが高いとして「対策に漏れがないかいま一度確認し、吸気口のフィルター設置をはじめ、できる限りの対策を講じることに尽きる」と呼びかけた。 Q 鳥インフルエンザとは。 A A型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気。鶏などへの病原性の強さやウイルスの型によって高病原性や低病原性などに区別される。高病原性だと鶏の多くが死ぬ。 Q 人へ感染するのか。 A 一般に人に感染しないが、高病原性ウイルスを排泄〔はいせつ〕する家きんと直接的に接触して大量のウイルスに暴露した場合、まれに感染する可能性がある。海外では死亡者も出ているが、国内で感染例はない。 Q 鶏肉や卵を食べて大丈夫か。 A 発生農場の鶏や卵は全て処分するため市場に出回ることはない。万一、ウイルスがあったとしても、十分に加熱すれば感染性を失う。酸にも弱く、人の胃酸などで死滅すると考えられる。
Q 鳥を飼っている場合の注意点は。 A 野鳥が近づかないように気を付け、ふんはすぐ片付ける。鳥の体やふんに触れたら手洗いやうがいを。餌を口移ししない。 Q 死んだ野鳥を見つけたら。 A 鳥インフルエンザだけでなく、他のウイルスや細菌、寄生虫が原因で死んだ可能性もある。素手で触らず、最寄りの行政に問い合わせる。 (農林水産省、農研機構ホームページから)
南日本新聞 | 鹿児島