U-23日本代表の成長曲線は? パリ世代の10代を知る「育成のプロ」が完敗したスペイン戦を見て思ったこと
【マスチェラーノに指摘された日本との違い】 ── パリオリンピック準々決勝・スペイン戦(0-3)を見て、どのように感じましたか? 「やっぱり代表活動って難しいですよね。全員でトレーニングできる日は、本当に1回か2回しかないこともザラにあります。あとはミーティングを重ねて、頭のなかで理解してもらうしかない。 ただ、そういう状況だからこそ、国としてのカラーも出てくる。スペインが攻撃してくる時に日本は4-4-2でブロックを引きながらプレスをかけたいのですが、それにはクラブレベルのトレーニング回数が必要です。逆にスペインのプレスはすごく柔軟性があり、クラブレベルで積み重ねてきたものを代表レベルでもやってくるんだと驚きました。結局、個人戦術が必要なんだということをあらためて思いましたね」 ── 短い準備期間で、どこまで連係の精度を上げることができるか。 「そうですね。スペイン戦を見ていて、U-20代表監督をやっていた時のことが頭をよぎりました。アルゼンチンと試合をしたことがあるんですが(2022年モーリスレベロトーナメント。2-3で惜敗)、スコア以上に衝撃を受けたのは、ピッチでやっていることが日本とアルゼンチンでまったく違っていたことです。 その時のアルゼンチンU-20代表を率いていた(ハビエル・)マスチェラーノに聞いたんですよ。『日本と君たちとは、何が違うのか』って。すると彼は、最初は『日本もいいチームだよ』ってはぐらかすから、『そういうお世辞はいい』って返したら、『インディビジュアルのタクティクス(個人戦術)の部分がちょっと違うかな』と。 今回のスペイン戦を見て、結局はそういう個人戦術の違いが勝敗を分けるのかなと。そんな考えが、頭のなかをグルグル駆け回りましたね」 ── そうなると、選手の鍛え方はまったく違ってきますよね。 「日本人の指導の方向は結局、スキル(個人技術)に行き着くと思うんです。いいか悪いかは別にして、大きな場面から少しずつ小さく的を絞っていった時、1対1になったら個人で抜く技術が日本人は最も気になるのかなと。 でもスペイン人は、なぜ1対1でないといけないのか、そもそも抜かなきゃいけないのか、抜かなくてもいいんじゃないか、抜くことによって何を得たいのか......など、プレーのあとに起きる出来事に、よりフォーカスしていると感じます。オリンピックで敗れたスペイン戦では、それが顕著に表われていたサッカーのように思えました」