U-23日本代表の成長曲線は? パリ世代の10代を知る「育成のプロ」が完敗したスペイン戦を見て思ったこと
【U-18時代に衝撃を受けた世界との差】 ── 急転直下の出来事だったのですね。 「たしか午前中の活動は中止にして、朝ごはんを食べさせたあとは待機してもらったのかな。そしてお昼になって、選手たちに話しました。目標がなくなってしまいましたからね、本当にかわいそうで......。でも、歩みを止めてはいけない、この合宿は最後までやろう、と伝えました」 ── 当時、ロールモデルコーチだった内田篤人さんと話した時、彼も「合宿を切り上げて選手を家に帰してあげるべきではないか」など、いろいろ考えている様子だったのを覚えています。 「その時点では最終予選(2021年予定のAFC U-20アジアカップ)が開催されるのかどうかもわからなかったので、やれることはやろうという方針でした。でも、U-20ワールドカップが中止になったことで、合宿を切り上げて帰った選手もいます。それぞれ所属先のクラブ事情もありますしね。シーズンも終わってオフの時期でしたから」 ── 山本理仁選手に最近、その当時の合宿の話を聞きました。「ほんとに地獄だった。何のためにやっているのかわからなくて......」という話をしていました。 「まあ、そうですよね。大岩ジャパンの選手たちとは、U-18時代の最初のカナリア遠征(2019年2月)からずっと一緒に過ごしてきました。その遠征ではスペインに0-4でやられたのですが、その悔しさもあって選手たちは本気モードになりましたので、U-20ワールドカップで彼らを世界に出せていたら......と、今でも思います」 ── 山本選手も最初のカナリア遠征では「世界のレベルに驚いた」と言っていました。 「そうなんです。僕たちコーチングスタッフもそこそこ勝負になるだろうと思っていたら、あまりにもレベルが違いすぎて......。技術面から何もかもすべて違っていました。 でも、おかげで僕たちはそこに基準を置くことができたので、日常からサッカーへの取り組みを考え直そうと話しました。そして同年9月のムルシア遠征では、スペインになんとか勝つことができたんです(1-0の勝利)。 ただ、同じピッチに立っていても、スペインとのレベルの違いは強く感じました。日本の選手たちも同じように成長していると思っていたのですが、まったく追いついていなかった。彼ら(日本人選手)の世界デビューが遠のいたようにも思いました。スピードの違いについては『仕方ないことだ』と伝えましたね。だから、その世代の選手たちがオリンピックまで行けたことを、あらためてすごいなと思っています」