普免で運転できる話題のトラック・いすゞエルフミオに新たな仲間!? 日産・マツダ向けOEM車には意外な違いも!
「自家用ユーザー」が多い市場
……といういすゞ積載量1トン小型トラックの略史(これでも一部)は、実は本稿の前フリである。 このエルフミオ投入を密かに期待していたのは、いすゞから積載量2~4トンクラスのエルフをOEM調達してきた、日産(1995~2012年、2021年以降の再開では1.5トン車を含む)とマツダ(2004年~)ではないだろうか。 というのは、エルフミオのクラスはもともと、自営業などの自家用トラック(白ナンバー)ユーザーが伝統的に多い市場で、客層が乗用車ユーザーと近い。また、食品の小口配送を行なう大口ユーザーが好んで導入してきたのもこのクラスだった。そしてドライバーは基本的に普免取得者である。 その自家用トラック市場をメインとしていたのが、日産であり、マツダだったのだ。 しかし日産は2021年に、マツダは2010年に、それぞれ小型トラックの自主開発・生産から撤退した。撤退の理由は各社の事情によって違うが、いずれも最後まで残っていたオリジナルモデルは積載量1~1.5トン車だった。母体ユーザーには可能な限り商品の供給を行なってきた企業努力の跡でもある。 いすゞにとってエルフミオは、当然このマーケットを視野に入れているが、いま現在も保有ユーザーがいる日産、マツダにとっても、ラインナップ補完モデルとして魅力的なクルマである。特にディーゼル車は、積載量850kgクラスの日産バネット、マツダボンゴを含めてブランクとなってきただけに、母体ユーザーのニーズに応えるポテンシャルは高いだろう。
メーカー扱いの特装車はオリジナル!?
エルフミオの日産向けOEM車は『アトラスF26普通免許対応モデル』、同じくマツダ向けOEM車は『タイタンLHR(普通免許対応車)』と、それぞれに表現されている。日産は直截的なタイトル、マツダは車両型式(LHR87AF)からの引用で、『ミオ』に類するような接尾詞や特別な名称を与えておらず、割と地味な扱いではある。 エルフミオ、アトラス普免車、タイタンLHRは、フロントグリルのデザインとエンブレム類、ボディカラー設定色数などが異なり、アトラス普免車、タイタンLHRではフロントバンパーはボディ同色のみ、ADAS(先進運転支援システム)装備がエルフミオのスタンダードパック(メーカーオプションの充実仕様)相当が標準となるほか、一部の装備が標準となるかオプションとなるかといった程度で、中身は同一のクルマである(ただし現時点で未発売の車型がある)。 だが、アトラス普免車では、日産の子会社オーテックジャパン扱いの特装車が用意されており、いまのところメーカー扱いの特装車を絞りこんでいるエルフミオよりも、特装車ラインナップが充実しているという「逆転現象」がみられるのだ。 そのラインナップには、ドライバン、保冷バン、冷蔵・冷凍バン、テールゲートリフタ付平ボディ、電動ダンプが並び、さらに「架装事例」としてカーテン車や4ナンバードライバンおよび温度管理バンまである。中にはエルフミオと同一の架装(電動ダンプ)もあるが、もっともオーソドックスなドライバンは北村製作所製(エルフミオはパブコ製)で、荷箱の内法サイズと床面地上高、積載量といった主要スペックもすべて異なるなど、日産オリジナルの展開が広がっている。