Adobeの画像生成AI「Firefly Image 3」提供開始。Photoshopに「画像を生成」追加、「生成塗りつぶし」強化など新機能を解説(西田宗千佳)
道具としての「フォトショ」を生成AIでさらに進化
こうしたことは、当然ながらPhotoshopでも役にたつ。ボイス氏は「Photoshopの生成AI関連の新機能は、基本的にImage 3を使っている」と話す。 冒頭の動画にもあった「Reference image」「Generate similar(似たものを生成)」「Generate background(背景の生成)」などは、Image 3への進化を生かした事例と言えるだろう。 「Reference image」を使うと、画像の一部を生成する場合、リファレンス画像の持つ質感や形状を生かしてイメージを作れる。従来同じことをするなら、トレースしながら手書きするか、カスタムブラシ機能を使ってパターンを描くか……というテクニックを使う必要があったが、Fireflyを使うことで簡単に再現できる。 「Generate similar」は、生成したものからさらに「もっと良いもの」を作るのに使える。 アドビは生成AIで画像などを作る際、3つのバリエーションを同時に提示する。そこから求めるものを選ぶわけだが、「Generate similar」を使うと、選んだものからさらにバリエーションを生み出していける。プロンプトの試行錯誤によらずこういうことができるのは、確かに便利だろう。 現実問題として一番便利なのは「Generate background」だろう。 PhotoshopにはAIを使った「オブジェクト選択」という機能がある。昔なら手作業で選択範囲を作っていたが、今はAIである「Adobe Sensei」を活かし、選択したい物体をワンクリックで選べるようになった。 そうした機能の延長線にあるものとして、今回の新バージョンで登場したのが「Generate background」。要は選択したオブジェクト「ではない」部分を背景とし、背景を生成AIで作って入れ替えるものだ。 ボイス氏は、「Photoshopで広告イメージなどを作る場合、もっとも頻繁に行われているのが背景の入れ替え」なのだと言う。場合に応じて作り替えたい、というニーズは多いが、そのために「オブジェクト選択」を使った上で、画像合成が行われる。 今回のアップデートでは、そうした部分に生成AIを活かすことで、より簡単に作業が終わるようにしている。 画像生成AIは日進月歩。「リアルな絵を作る」「目的の絵を作る」技術も日々進化している。絵を作るというだけであるなら、アドビがFireflyで行っていることも、他のツールでできないわけではない。 だが、アドビはPhotoshopなどのツールを持っている。その中にFireflyを積極的に組み込むことで、「技術ではなくツールとしての価値」をアピールしている。 その観点で言えば、同社の戦略はAIだけを作っている企業に一歩先んじている。今後も「ツールにお金を払ってもらう」ための戦略でもある、ということだ。
西田宗千佳@TechnoEdge
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