デフレ完全脱却が最優先の第2次石破内閣、岸田政権の「新しい資本主義」継承…「成長と分配の好循環」目指す
第2次石破内閣は、デフレからの完全脱却に最優先で取り組む方針だが、日本経済の成長率を高める成長戦略は描き切れていない。少数与党となり、国民民主党などとの調整次第では分配が重視され、財政出動による「バラマキ」に陥る懸念も指摘されている。 【図】政府の成長戦略の主な課題
賃上げ
石破首相は「賃上げと投資がけん引する成長型経済」を掲げる。岸田前首相が看板政策とした「新しい資本主義」を継承し、「成長と分配の好循環」によるデフレ脱却を目指すものだ。
政府は、額面といえる名目賃金から、物価上昇分を差し引いた実質賃金という指標を重視する。賃上げのタイミングは、春闘や夏の最低賃金の改定時などに絞られるため、政府は近く策定を目指す総合経済対策で電気・ガス代に対する補助金を再開する検討に入った。
ただ、効果を疑問視する声もあり、明治安田総合研究所の吉川裕也氏は「小規模企業の賃上げ疲れで、来年1月に補助金を再開しても2~3月の実質賃金はマイナスになる」と予測する。
投資
成長戦略では、補助金などの分配政策だけでなく、企業の成長力を底上げする政策が求められる。日本の潜在成長率は2023年で0・4%と米国(2・0%)などに比べて劣り、先進7か国(G7)で最低の状況が続いているからだ。
石破首相は10月の記者会見で「投資大国ニッポンを実現する」と表明した。自動車や半導体、農業などを挙げ、「輸出企業が外からしっかりと稼ぐ。産業の生産性を向上させるための投資を促進する」と訴えたが、実現の道筋は見えない。
半導体支援では、政府はこれまでの3年間で計3・9兆円の予算を計上してきた。今後についても「従来と同規模の支援を目指す」(経済産業省幹部)方針で、経済対策では半導体支援に使途を限る新たな国債発行などの支援策を盛り込む方向だ。しかし、先端半導体の国産化を目指すラピダスは、27年の量産開始までに5兆円規模の資金が必要とされ、現在も約4兆円の調達のメドが立っていない。