原発、リニア…論争的テーマは避けられがち「衆院選は国益と地域課題の両方の議論を期待」 静岡大・井柳美紀教授
27日投開票の衆院選について、静岡大人文社会科学部の井柳美紀教授は産経新聞のインタビューに応じ、原発再稼働やリニア中央新幹線など「論争的なテーマは議論が避けられがちだが、国益と地域課題の双方の視点を踏まえた議論を期待したい」と語った。 今回の選挙では、「政治とカネ」の問題が自民党に発覚したことを受け、立候補者は与野党問わず、政治改革をどう推進するのかが問われています。静岡県内では派閥パーティー収入不記載事件に関わった議員は引退か離党かしましたが、なお関心は高いと思います。 一方、安全保障や経済政策など国の将来像を見据えた論戦にも期待したいですが、国政につながる県内の地域課題についても建設的な見解を示してほしい。 例えば、中部電力浜岡原子力発電所の再稼働問題。原発が立地する御前崎市は3区に含まれ、地元有権者の間では関心が高い。リニア中央新幹線の静岡工区着工問題も、島田市など大井川流域が位置する2区では関心が高いテーマです。 こうした論争的なテーマについては議論が避けられがちですが、賛否にかかわらず国益と地域課題の双方の視点を踏まえた議論を期待したいです。なお、これらに明確な反対を示している共産党は今回この2つの選挙区に候補者を擁立しませんでした。 小選挙区の選挙は、政党選択の要素もありますが、特に地方では地元の代表となる「地域のリーダー」が選出されがちです。「政治とカネ」問題などに端を発した自民への逆風は大きいですが、この争点が有権者の選択にどの程度の位置を占めるのか注目したい。一方、旧民主党が政権交代を実現させた平成21年選挙時のように、野党がある程度の塊として存在していませんし、前回の令和3年選挙以上の選挙協力もないことから、ダイナミックな「変化」は起きにくいとも感じます。 政党選択を行う比例代表における自民の得票数(率)にも注目したい。3年選挙で自民は、全8区で5勝3敗でしたが、敗れた候補は全員、比例代表で復活当選を果たしています。今回、東海比例ブロック全体をみわたすと県内での比例復活はそれほど簡単とは思えず、自民の議席数に関わってきそうです。 いやなぎ・みき 米オレゴン州ポートランド生まれ。東京大大学院法学政治学研究科博士課程修了。宮城教育大教育学部准教授、平成23年に静岡大人文社会科学部准教授に着任、27年から現職。専攻は政治学・政治思想。趣味は古書店巡り、温泉巡りなど。お薦めの一冊は橋場弦「丘のうえの民主政」(東京大学出版会)。