【ホープフルS回顧】クロワデュノールは“センスの塊” キタサンブラック産駒の大物候補が三冠へ視界良好
北村友一騎手は4年ぶりのGⅠタイトル
スタート直後に隊列はすんなり決まり、明らかにスロー。1000m通過1:01.4と遅く、12.7-12.7とリズムを保ちにくいラップが入っていた。中盤での抑えも来春に欠かせない。 これを嫌った17番人気ファウストラーゼンが動いてくれて、GⅠらしい攻防に。後半800mは11.6-11.7-11.9-11.9。軽さが求められない、春へつながる競馬になった。まくって動いたクロワデュノールは追うジョバンニに2馬身差をつけた。自力で勝ちに行き、後ろを離す完勝劇だった。 キタサンブラック産駒であり、イクイノックスが重なるが、2歳での完成度はクロワデュノールだろう。父もイクイノックスも3歳秋に大成したように、ちょっと晩成の血だが、これを早期から仕上げてしまうからノーザンファームは恐ろしい。また、本来は成長力に富む血であり、クロワデュノールの能力もまだまだ先がある。そんな血統の奥行きも魅力だ。 北村友一騎手は2020年クロノジェネシスの有馬記念以来となるGⅠタイトルだった。4年前と同じ斉藤崇史厩舎の管理馬で、馬主もサンデーレーシングと縁を感じる。 大ケガでリズムに乗りきれない騎手だが、中長距離でのリズム感にセンスが光る。押し引きが上手く、馬が抑えられる感覚もなく、絶妙なリズムで走る。クロワデュノールにとって、最高のパートナーだろう。とにかく無事に来春のトップシーズンを迎えてほしい。
現状は完敗だったジョバンニ
2着ジョバンニはエリキングに連敗し、今度はクロワデュノールの2着と、どうも運がない。 枠順をいかし、上手に流れに乗り、直線までインで立ち回るという最高の形で敗れた。現状の力差といわざるを得ない。こちらもセンスは負けていないが、少しばかり底力が足りないか。春に向け、その点を鍛えて実力強化を図りたいところだ。 また、スタートとダッシュ力に課題がある。序盤で位置をとるには、今回のように枠順や相手関係次第。周りが速く、位置取りに苦労するようだと、勝てるポジションにつけられない。改善点が多い状況で重賞2着続きだから、能力は間違いない。 3着ファウストラーゼンは中盤でまくり、レースを面白くしただけではなく、3着に残って波乱を演出した。 気楽な立場だったからだが、遅いなら動いて優位なポジションを目指すという貪欲さは勝負の世界では失ってはいけない。杉原誠人騎手の2025年が楽しみになった。 ファウストラーゼンもあえて厳しい競馬をしながら、最後まで集中力を切らさなかった。中山が舞台なら、再度好走する可能性もある。今回の3着をフロック視すると、痛い目に遭いそうだ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳