"史上最高のDH"エドガー・マルティネス超えを目指せ!! ドジャース・大谷翔平が目指す"異次元記録"
■超えるべき頂は〝史上最高のDH〟 マルティネスとは、マリナーズひと筋で1990年代を中心に活躍した超レジェンド。現役を引退した2004年以降、最優秀DH賞は「エドガー・マルティネス賞」に名称変更されるほど、インパクトを残した選手だ。 キャリアハイとされる1995年シーズンは、打率.356で首位打者を獲得。さらに、出塁率(.479)、OPS(1.107)でメジャー1位に輝いた。 「私自身、大好きだった打者で、とにかく技術があって勝負強く、警戒されながらも出塁率が高かった。たとえるなら、シーズン得点圏打率の日本記録を持つ落合博満さん(元ロッテほか)が、MLBの広い球場で全盛期を過ごした感じ」 特に目を引くのは、長打率+出塁率ではじき出されるOPSの高さ。日本以上にMLBで重要視される指標で、0.900を超えれば一流打者といわれるが、1995年のマルティネスが残した1.107はDH専任打者として歴代最高記録。現在、大谷はその数字を上回る1.139を叩き出している。 「OPSを高めるためには三振を減らし、四球をしっかり選んで長打を重ねる必要があります。本塁打王を獲得した昨季のOPSは1.066。十分すごい数字ですが、今の大谷はより穴のない選手になっている証拠でもあります」 今季の大谷といえば、二塁打の数が異様に多いことも特徴のひとつ。現在14二塁打で、MLBシーズン記録の67二塁打に迫るペースだ。 ちなみに、マルティネスも二塁打が多かった選手として知られ、1995年、1996年は2年連続で52二塁打を記録。そもそもシーズン50二塁打以上は極めて難しく、昨季のフリーマンが59二塁打で「87年ぶりの60二塁打ならず」とニュースになったほどだった。 「シーズン60二塁打以上を記録したのは過去6人だけで、いずれも1930年代以前。球場やボールが変わった現代野球でこの数字を意識できるのはとんでもないこと」 目指すは、勝負強く、二塁打も多く、OPSが高いマルティネス超え。そのための課題はなんだろうか? 「まずは得点圏打率の低さ。現在の得点圏打率は.225で、チャンスやサヨナラの場面で打てていません。昨季までチャンスに弱かったわけではなく、今季は完璧を求めすぎるがゆえの〝力み〟が原因だと思います。 大谷といえども、人の子です。超大型契約のプレッシャーはあって当たり前で、ないほうがおかしい。その上で、『自分が試合を決めてやる』とチャンスで意気込みすぎずに打ってほしいです」 お股ニキ氏は続けて、例年苦手にしている左投手への対応について指摘する。 「対右投手に比べて、対左投手の打席ではオープンに構えるべきですが、今は少し開きすぎています。ソフトバンクの柳田悠岐やかつての松中さんくらいのバランスがベスト。ただ、現地時間5月5日のブレーブス戦では、左投手から2発打ちました。だんだんと良くなってきています」 ちなみに、〝史上最高のDH〟マルティネスでも実現できなかったのは、シーズンMVP受賞だ。両リーグでのMVPとなれば史上ふたり目、DH専任でMVPを受賞した例は過去に一度もない。前人未到の頂へ、大谷のバットから目が離せない。 文/オグマナオト 写真/時事通信社