良い物件を見つけたのですが「敷金2ヶ月・礼金3ヶ月」と初期費用が高いです。きれいに使ったら退去時に敷金を丸々返してもらえますか?
賃貸物件の敷金は、どのような扱いになるのでしょうか。本記事では、敷金が返還される条件を解説します。また、敷金の役割、返還されない場合の理由、退去時に注意すべきポイントを説明し、原状回復トラブルを避けるためのポイントをご紹介します。 ▼アパートの1階と2階で「家賃」はどれだけ変わる? 1階暮らしのメリット・デメリットも紹介
敷金とは
敷金は、賃貸物件を借りる人が不注意で部屋を損傷および破損してしまった場合や賃料の滞納、損害を担保するために大家さんが入居者から預かるお金です。家賃滞納もなく、通常の範囲内で生活した場合は、基本的に敷金はそのまま返却されます。 契約終了した賃貸物件は「原状回復」する必要があります。入居者が故意や不注意で損傷・汚損を生じた場合、大家さんに対してその損害を支払っていない場合には、退去時にその金額分が敷金から差し引かれて返却されます。 一方、敷金と似た言葉として「礼金」がありますが、部屋を賃貸させてもらったことへの「お礼のお金」として大家さんに支払うため、返却されることはありません。
敷金が返還される条件
敷金を全額返してもらうための条件に必要なのは、「入居者の故意や不注意で損傷・汚損がないこと」です。経年による建物や設備などの自然な劣化や、通常の範囲内で使用することで生ずる消耗などは含まれません。 国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復は「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。 具体例として、畳の変色や家具の設置によるカーペットのへこみ、冷蔵庫裏の壁の黒ずみ、画びょうの小さな穴、自然にできた壁紙クロスの変色などは通常の範囲内での使用と判断され、原状回復としての入居者の負担は不要です。
敷金が全額返還されないケースとは
お風呂やトイレの水あかやカビ、台所の油汚れ、キャスターつきの椅子による傷やへこみ、タバコのヤニによる壁等の変色、ペットが床壁につけた傷などは原状回復が必要と判断され、敷金の全額返還は難しく、修繕や清掃代が敷金から差し引かれます。 また、入居していた部屋がとてもきれいで修繕や清掃が不要だと入居者自身は判断しても、特約事項が記載されていて敷金からお金が引かれているケースもよく報告されています。 例えば、「退去時に畳の表替えは入居者負担とする」や「退去時のハウスクリーニングの費用は借主が負担する」などクリーニングの特約が記載されているケースですが、通常損耗まで含めたクリーニング特約は有効とされない場合もあります。 しかし、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると「契約終了時に、本件貸室の汚損の有無及び程度を問わす専門業者による清掃を実施し、その費用として2万5000円(消費税別)を負担する旨の特約が明確に合意されている」と判断されたケースがあり(東京地方裁判所判決平成21年9月18日)、借主にとっては退去時に通常の清掃を免れる面もあること、月額賃料の半額以下の清掃費用など専門業者の清掃費用として相応な範囲であることを理由に有効と判断された事例があり、こういった場合特約の有効性が高く、支払いが必要と判断されています。