アメリカの「台湾のヤマアラシ化」作戦とは…対中国で浮き彫りになったアメリカと台湾の「危機感の違い」
米国が力を入れる「ドローン部隊」
米国が「台湾のヤマアラシ化」作戦に乗り出した。台湾に対して、戦闘機や戦車のような大型兵器ではなく、ウクライナ戦争で効果が実証されたドローンや無人水上艦、無人潜水艦のような兵器を購入するよう、迫っているのだ。台湾は防衛戦略を転換できるのか。 【画像】韓国・文在寅の「引退後の姿」がヤバすぎる…! 米国は昨年から、急ピッチでドローン部隊の構築に力を入れてきた。 国防総省は昨年8月、ドローンや無人の水上艦、潜水艦などで構成される偵察・攻撃部隊の創設を発表した。この計画は「リプリケイター(模型をつくる人)」と呼ばれ、部隊は数千ものドローンや無人水上艦などで構成される。名前はドローンがプラモデルのようなイメージを持っているからだろう。 今年に入ると、国防総省は3月11日、ドローン部隊の創設に2024年度と25年度にかけて約10億ドル(約1600億円)を配分する、と発表した。予算も決まり、計画はいよいよ具体的に動き出した。 ワシントン・ポストは6月10日、米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官とのインタビュー記事を配信した。パパロ司令官は、中国軍が台湾海峡を渡って侵攻する構えを見せれば「米軍は直ちに無人の潜水艦や水上艦、ドローンを出撃させる」と語った。ドローン部隊の創設は、中国を念頭に置いていたのだ。 CNNは6月19日、米国防総省の国防安全保障協力庁(DSCA)が「台湾に対する1000機以上のドローンの売却を承認した」と報じた。米軍だけでなく、米国は台湾にもドローンを売却しようとしている。 これだけ見ると、あたかも米国と台湾が歩調をそろえて、動き出したかのように見える。ところが、話はそう簡単ではない。 なぜかといえば、台湾はこれまで、戦闘機や戦車、潜水艦のような大型兵器の増強に力を入れ、ドローンのような小型兵器の購入に2の足を踏んできたからだ。日本では、まったく報じられていないが、これは秘密でもなんでもない。これまで多くの軍事関係者が指摘し、米欧メディアは繰り返し「台湾が抱える重大問題」として指摘してきた。 たとえば、英エコノミスト誌は昨年3月6日付で「台湾は中国と対峙するのに、新たな防衛戦略が必要だ」という記事を配信した。記事は「台湾はヤマアラシ(porcupine)化を最優先にすべきだが、戦略決定に曖昧さがつきまとっている」と批判した。 台湾の「ヤマアラシ化」とは何か。これは米欧の関係者が、あるべき台湾の姿を語る際のキーワードになっている。つまり、台湾がトゲで全身が覆われたヤマアラシのようになれば「中国は痛くて、台湾を飲み込めなくなる」という話だ。 ところが、台湾はヤマアラシ化ではなく、戦闘機や戦車、潜水艦のような大型武器の購入を防衛戦略の最優先事項に据えてきた。理由はいくつかある。 たとえば、中国軍機が台湾との中間線を超えて飛来している現状では、対応するために戦闘機が必要だ。あるいは、古い幹部の中には「いつか台湾が中国を取り戻すには、正規軍の装備がいる」などと「夢物語」を語る者もいる。