アメリカの「台湾のヤマアラシ化」作戦とは…対中国で浮き彫りになったアメリカと台湾の「危機感の違い」
台湾にしびれを切らした米国
台湾は「いざ中国が侵攻してきたら、米国は本当に守ってくれるのか」という疑念も抱いている。米国が守ってくれないなら、自分たちだけで戦うしかないが「そうなったら、正規軍の装備が不可欠になる」という理屈になる。 5月17日配信コラムで指摘したように、米国は、そんな台湾に強い不満を抱いていた。「いくら戦闘機があっても、野外にむき出しの滑走路や格納庫が空爆されれば、まったく無意味だ」「戦車があっても、そもそも中国軍に上陸されてしまってから、戦うのでは遅すぎる」などといった具合だ。 米国は「戦闘機をスクランブル発進させて、台湾上空を守るより、中国の侵攻に備えるべきだ」と訴えてきた。だが、台湾は「国家」として備えるべき通常の軍事力にこだわり、中国の侵攻に備えた防衛装備の拡充をおざなりにしてきたのだ。 これは、本質的には「危機感の違い」とみていい。 いまや、台湾は戦闘機や戦車、潜水艦で自分の領土、領海、領空をパトロールしていればいい段階はとっくに過ぎて、明日にも押し寄せてくる中国軍を「具体的にどう食い止めるか」の段階に入っている。にもかかわらず、台湾は、いわば「平時の体制」を続けようとしているのだ。 米国は、そんな台湾にしびれを切らして、ドローン部隊の編成に動いた。そして、台湾にも同じ体制の整備を要求している。先のエコノミスト誌は「米国は台湾の軍事指導者に堪忍袋の尾を切らして、台湾の大型武器購入リクエストを拒否し(ドローンのような)非対称システムの購入を迫っている」と、双方のすれ違いを指摘している。 中国が台湾侵攻を決断するなら、どんな形になるか。 3月8日配信コラムでは、元自衛隊統合幕僚長、河野克俊氏の意見を紹介したが、河野氏を含めて、多くの専門家は「中国は1週間程度の短期決戦を挑むだろう」とみている。元オーストラリア大使の山上信吾氏も、私のニコ生番組で同じ見解を述べていた。