「自分の役割を一生懸命に」杉野遥亮 を奮い立たせた映画『風の奏の君へ』 “心の動き”に寄り添う役作り
デビュー以来、数多くのドラマや映画への出演を重ねて、着実にステップアップを図り、さまざまな役柄への挑戦を続ける杉野遥亮さん。 【画像】杉野遥亮を奮い立たせた映画『風の奏の君へ』 “心の動き”に寄り添う役作り 2024年6月7日(金)に全国公開する映画『風の奏の君へ』では、兄への複雑な感情を抱える青年・真中渓哉の心の機微を丁寧に紡いだ姿に共感を覚える人、続出。甘酸っぱい恋心や若さゆえの不器用さにキュンとする人も多いはず。 今回は杉野さんに『風の奏の君へ』での役作りや映画の見どころなどを伺いました。
台本に描かれている人物に寄り添う、それが自分に唯一できること
――『風の奏の君へ』のオファーを受けたときの気持ちをお聞かせください。 大谷健太郎監督とは『花にけだもの』という作品でご一緒したことがあり、またオファーを頂けたということで、何かお役に立てることがあればという気持ちがありました。 また当時は結構ドラマを撮影していたのですが、3カ月でひとつの作品を撮るというドラマのスケジュール感ではなく、1カ月かけて2時間の映画を1本撮るという、少しゆっくり撮影することを経験したいと思ったという理由があります。 あとは、全編岡山ロケだというのも魅力的でした。東京の喧騒から離れたところで仕事ができるというのが嬉しかったです。 ――今回の真中渓哉という役に関して、どのように役作りをされましたか? 台本を読んだときに、現場に行ってみないとわからない部分があったんです。そこから現場に入りましたが、やはり自分は真中渓哉という人物がなかなかつかめない、見えてこないという感じがありました。ですので、撮影中はもちろんですが、夜、ホテルに帰ってからホテルのロビーで監督と話すなど、そういう時間を作っていただきました。 多分自分は、立ち止まり続ける人、後ろを向いている人、成長しようとしない人や、誰かに委ねているみたいな人、そういう人物に対して共感ができないんです。この真中渓哉という人はお兄ちゃんのことなどに悩みながら、瞬間瞬間で“もがいている”ような感じがしました。 そういった渓哉の一生懸命なところが共感出来ましたし、もしかしたら、そこは自分と似ているかもしれないなと感じました。セリフの言い回しなどは監督とも話をさせていただきながら、細かく追及を重ねて役作りを行いました。 ――とても丁寧に心の機微が表現されている演技だったと思います。役作りはいつもそういった“心の動き”にフォーカスして、それをご自身の中で繰り返し考えながらアプローチされますか? 作品によっても違いますし、台本によっても違いますが、基本的に自分がやることは、そこに描かれている人に寄り添うことです。外側でどうこうするよりは、まずその人の心情とか、どうしてこういう気持ちになるんだろう、というのを感じにいく。それが一番かなと思います。 ――大谷監督とは以前ご一緒されたことがあるとのことでしたが、そのときと今回との関わり方の違いはありましたか? 監督との意見の違いや見方、考え方の違いはコミュニケーションを取って、埋めていきました。前回ご一緒したときの自分と、この映画を撮影していたときの自分は結構変わったと思うんです。環境も変わり、考え方も変わってきました。 それが“成長”なのかどうかは分かりませんが、仕事に対してのスタンスも、最初にお会いした頃とは変わっているので、関わり方に違いはあったと思います。 今回ご一緒するにあたって、自分の意見をちゃんと持てるようになってきたと思うので、「以前と変わった」と思われたかもしれません。 ――昔の杉野さんは、どんな感じだったのでしょうか? そうですね……。一言で言うなら、昔は「自分の足で立とうとしていなかった」時期だったと思うんです。誰かの言う通りに従って、誰かについて行ったり。そっちのほうが安心でしたし、心地よかったのかもしれません。