キスマイ藤ヶ谷太輔&奈緒に聞く、婚活への本音【「傲慢と善良」インタビュー】
藤ヶ谷太輔(Kis-My-Ft2)と奈緒の主演で、辻村深月氏のベストセラー小説を映画化した「傲慢と善良」が公開中だ。物語の中心となるのは、マッチングアプリで出会った西澤架と坂庭真実。男女それぞれの視点でリアル過ぎる恋愛観と価値観が描かれ、映画ではオリジナル展開も待ち受けている。架と真実を演じた藤ヶ谷、奈緒に撮影の裏側や、テーマの一つでもある“婚活”について話を聞いた。(取材・編集部/撮影・間庭裕基) 【フォトギャラリー】藤ヶ谷太輔&奈緒のインタビューカット 【あらすじ】 これまで仕事も恋愛も順調だった西澤架は、長年交際していた恋人にフラれたことをきっかけに、マッチングアプリで婚活を始める。そこで出会った控えめで気の利く坂庭真実と付き合い始めたものの、1年経っても結婚に踏み切れずにいた。ある日、真実がストーカーに狙われていることを知った架は、彼女を守るためようやく婚約を決意するが、真実は突然姿を消してしまう。真実の行方を求めて彼女の両親や友人、同僚、過去の恋人を訪ね歩くうちに、架は知りたくなかった彼女の過去と嘘を知る。 監督は「ブルーピリオド」の萩原健太郎、脚本はドラマ「最愛」の清水友佳子。原作を「人生で一番好きな小説」と語る藤ヶ谷が架役、「辻村作品に出演するのが夢だった」という奈緒が真実役を等身大で演じている。 ――撮影前にはどんな準備をしましたか? 藤ヶ谷:原作は特に読み返しました。2回くらい読んで、いただいた脚本も読んで。最初に萩原監督が話したいと言ってくださって、3時間弱くらい話しました。すごく迷ったのですが、いろいろ思ったことを最初に自分で買った原作に直接書きました。本当に迷いましたが、これはもう運命だと思ったので。奈緒ちゃんは撮影前に別の作品に入っていて忙しかったと思いますが、みんなでたくさんディスカッションをしました。 奈緒:監督を含めたグループLINEを作っていただいて、みんなでご飯も食べに行きましたよね。事前に相談したいこともあったので、撮影に入る前にみんなで同じ方向を向くすり合わせができたという感覚がありました。それぞれを理解した状態で撮影に入れたと思っています。すごく繊細な描写が多いので、どうしたら効果的に作用するのかも含めてディスカッションしました。あとは心理的なこともそうですけれど、気を遣わずにいろんな角度からの話し合いができる現場でした。 藤ヶ谷:ラストシーンがどうなるのか、演出が決まっていなかったんです。撮影してみてどういう方向性にするのかをみんなで考えていきました。みんな辻村さんの「傲慢と善良」がとにかく好きなので、愛が強いがゆえにディスカッションも白熱して。みんながこの作品を愛しているんだなって伝わりました。 奈緒:かなり青春な時間でしたよね。ラストシーンは、監督の演出では、架と真実のかっこ悪さを大切にしたいという思いがありました。個人的には、夕日の風景のためにも時間が限られていたので、前日でもいいのでリハーサルをやって、この方向でいこうっていうのを決めておきたくて、撮影の前々日にその思いを叶えていただきました。ある程度の方向性を探すリハだったので、照明部さんや録音部さんはホテルに戻ってもよかったのですが、結局ほとんどの方が残ってくださいました。 藤ヶ谷:ラストシーンの撮影の日は、スケジュールに余裕をもっていたら2時間くらい空いて、みんなで歩いて道の駅に行っておみやげを買ったりしてね。 奈緒:助監督さんはカキ小屋に行ってカキを食べていましたよ(笑)。 藤ヶ谷:そのわりに、夕日は沈むのが早いから急ごうってなって(笑)。あれで夕日に間に合わなかったら、全員が道の駅に行くんじゃなかったって落ち込んでいたと思うので、間に合って撮影できてよかったです。 ――お2人の共演シーンは、実はそんなに多くないですよね。それでも架と真実が一緒に過ごしてきたというのが伝わりました。ディスカッションではどんな内容を相談しましたか? 奈緒:“傲慢さと善良さ”がキーワードでした。 藤ヶ谷:そうだね。食事以外でも、お互いに台本を読んでいてちょっと気になったらグループLINEに送ったりして。 奈緒:私は、架の心情は藤ヶ谷さんに託していました。ディスカッションしているなかで、わからないっていうことも出てきていいなと思っていました。それが架と真実のすれ違いになるんだなって。監督も含めて話しているとき、新たな気づきがあったり、みんなでざっくばらんに話せたことがすごく嬉しかったですし、この作品には必要だったなと思います。 ――藤ヶ谷さんは原作が「人生で一番好きな小説」、奈緒さんは辻村先生の作品のファンだと公言されています。どんな部分がご自身に刺さったのでしょうか。 藤ヶ谷:昔から、なかなか言葉では表せないような、驕ってきた気持ちや感じてきたことがありましたが、辻村先生の書いた1行を読んだときに、これだったんだってわかったんです。なんで俺のことがわかるのかなって思いましたし、読んでいてハラハラ、ニヤニヤしたりもします。人間の裏側をえぐられるというか、緊張感が伝わってきて「これやばいな」っていうニヤニヤです。 奈緒:初めて読んだ辻村さんの作品は「凍りのくじら」でした。本を読むようになったきっかけの1冊です。学生の時に読んだのですが、辻村さんの小説も学生や少年少女が主人公の設定が多くって。その時代って、私も自分の気持ちに言葉をつけるのが難しかったんです。うまく言葉にできない感情があるけれど、これを大人に言っても理解してもらえないし、理解してもらえる感情を自分も伝えられないから、蓋をしてもやもやしていたのですが、世の中にはわかってくれる人がいるんだって思えました。 それが私のなかでは衝撃でしたし、ミステリー小説が好きになったのも辻村さんの作品がきっかけです。ミステリー小説って、謎解きを楽しめるような、頭の回転がはやい人でないと楽しめないと思っていて、自分にはあまり向いていないかなと思っているなかで、人間の真理とミステリーが掛け合わさった辻村さんの作品を読んで、初めて自分のなかにミステリーを楽しむ心が生まれました。ワクワクする気持ちを学生の頃に広げてくれたのが、辻村さんの作品です。 「傲慢と善良」は、20代前半の方にも刺さって、試写で泣いた方もいるとお聞きしました。若い方にも刺さったのは意外でしたが、思い返すと私もそうだったなと思います。辻村さんの作品は、年齢をテーマにしているように見えて、人間の本質的な部分の迷いや寂しさなど、誰のなかにもあるそんな種を救い出してくれるんです。 ――婚活が一つのテーマになっています。婚活、またマッチングアプリについてどんなイメージを持っていましたか? 奈緒:私の親友がマッチングアプリで出会った方と結婚して、私もよく家に遊びに行っています。マッチングしてお付き合いしてからすぐに紹介してもらって、親友が席を外している間に、「(親友の)どんなところが好きなんですか?」って聞くという、やりたかったやつをやりました(笑)。 藤ヶ谷:やりたかったんだ(笑)。 奈緒:婚活に関しては、結婚したいっていう目的がしっかりしていて、誰かと一緒に生きていくっていう覚悟の表れだと思うので、素敵なことだなと思っていました。これまでは偶発的に出会って、恋愛して、結婚して……って思っていましたが、気づいたら私は20代が終わろうとしているので、私の親友も含めて、“誰かと生きていこう”と思って行動を起こしていることが素敵だなと思います。「傲慢と善良」のなかでも、条件や目的がはっきりしている人が婚活で成功するという、すごく響く言葉がありました。 藤ヶ谷:マッチングアプリが出始めたときって、正直言うといかがわしいイメージもあったと思います。今までは自然に出会うことだけが教科書にあったのに、条件を入れて会えるって、何それって思っていましたが、それがスタンダードになってきた。奈緒ちゃんの話を聞いていて同じように思ったのですが、結婚をしたいと思って行動することが大事。それってすごく素敵なことだなと思っています。 これから先、婚活やマッチングアプリはどうなっていくんだろうなって気になります。数年後にはもっと進化していって、もしかしたら会うことも排除されて、マッチングアプリ上で結婚することもあるのかもしれないですよね。 ――こういうお仕事じゃなければ、マッチングアプリに興味はありましたか? 奈緒:登録するかもしれないですね。私は決断は早い方なので、今の仕事を選んでいなければ、早く結婚している人生もあったのかもしれないと思います。仕事となると集中したくて、優先してきた結果が今の状況で、それはそれでとても幸せなことだなと思っていますが、“結婚、婚活”っていう観点だと興味はあったかもしれないです。 藤ヶ谷:僕の周りにはマッチングアプリをやっている人がいないので詳しくはわからないので、どうなんだろう……。この仕事をしていなかったら、幼稚園の先生になりたかったんです。幼稚園の先生になっていて、同僚の先生から「今こういうアプリがあるんだよ」って紹介されたら、「タレントなんで」って断ることもないですし、やっていたかもしれないです。