「アマゾン “業務委託契約”配達員も労働者」残業代の支払い求める裁判で弁論はじまる 原告ら“過酷業務”の実態を明かす
骨折した腰の痛みを押して配達続ける
過重な荷量は、配達員の心身にも影響を与えている。 原告Bさんは2022年9月、「少しでも早く配達を終わらせたい」と焦るあまり配達先の玄関前階段の最上段(15段目)から足を滑らせ、地面に転落。腰椎圧迫骨折を負った。 2か月にわたる休業後に配達を再開したものの、「腰の痛みが続いていましたが、痛みを押して配達するしかありませんでした」(Bさん)。 個人事業主のため本来は対象外となる労災だが、Bさんは横須賀労働基準監督署に申請。同監督署は、Bさんの業務実態について、実質的には会社から指揮監督を受けていたとして、労災保険法上の「労働者」と認め、休業補償の給付を決定した(23年9月)。
「原告らは労働基準法にいう『労働者』そのもの」
原告代理人の中村優介弁護士は、今回の訴訟でも労働者性が争点のひとつになると説明。 その上で、原告らについて「業務委託契約で働いているものの、労働実態に照らせば労働基準法でいう『労働者』(※)そのものです」と主張した。 ※労働基準法第9条「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」 また、その根拠について、中村弁護士は主に次の3点を挙げた。 ①配送するコースおよび荷物量について、諾否の自由がない。 ②被告らは、原告らに対して、配送方法に関する具体的な指揮命令を行っている。(GPSによって各配達員の業務の遂行状況を把握し、原告らに対し、連絡、指示等を行っていることなど) ③被告らは、原告らに対し、1週間の労働時間を60時間以内、1日12時間を上限として、エクセルで労働時間管理表を作成し、各配達員の労働時間の管理も行っている。
「多くの軽貨物配達員にも認められるべき」
グローバル企業の過剰とも思えるサービスが“しわ寄せ”となって、配達員にのしかかっていないか。 アマゾンジャパンは配送の委託先会社に対し、週60時間以内の労働時間制限を設けているが、原告Bさんは「とても週60時間で配達をすべて終えることはできません」と話す。 この問題は、何もアマゾンの横須賀地区に限った話ではなく、全国で配送等を請け負っている個人事業主が直面しているものではないだろうか。 中村弁護士は陳述の最後に、裁判官にこう訴えた。 「本来であれば労働者に支払われるべき時間外労働に対する補償としての割増賃金の支払いが、原告らに対してはもちろんのこと、原告らと同様の働き方をする軽貨物配達員にも認められるべきであることを付言します」 ■榎園哲哉 1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。
榎園哲哉