西武新宿線「おくちちぶ」復活の可能性は? 東村山駅高架化の予定も
原田氏によれば、所沢駅西口に9月開業予定の「エミテラス所沢」や、西武新宿駅をはじめとする都心各所、軽井沢などのリゾートに挙げられる西武グループ保有の優良な不動産を開発し、価値をのばしていくことを成長の柱として、「西武グループ長期戦略 2035」を策定しているという。この長期戦略では、不動産の再開発を中心に計画している。しかし、都市交通・沿線事業も変わらず重要であるため、西武鉄道においても設備投資を行いながら、沿線の価値向上に努めていくとのことだった。 西武グループとして、2050年度にCO2排出量を実質ゼロにする目標にも言及した。西武鉄道の都市交通沿線だけでなく、伊豆箱根鉄道・近江鉄道でも省エネルギーが大きなカギと考え、設備投資のあり方について、「まず西武鉄道の省エネに取り組んでまいりますが、グループ全体の取組みも進めたい」と原田氏は答えた。
自身の子が「西武塾」に参加したという男性株主から、地域社会との連携についての質問もあった。所沢市がふるさと納税の返礼品を再開すると聞いたことをきっかけに、「ふるさと納税でこういったことができそうだというアイデアがあればご意見いただきたい」と発言した。 この質問に、西武鉄道代表取締役社長の小川周一郎氏は、「ふるさと納税の案として、ここではまだ申し上げるには早いので控えさせていただきますが、街の魅力を高めるような、ソフト的な施策も含めて、今後しっかりと関係者と連携を図って進めていきたい」と回答。エリアとしての魅力発信について、沿線の自治体・企業・大学・商店街の各関係者と話し合いを始めているとのことだった。 ■かつての特急「おくちちぶ」復活を希望する声も 阪急電鉄沿線に住んだことがあるという男性株主は、関西私鉄のほうが関東よりサービスが良いと聞いたことから、「関西私鉄のサービスの良いところを取り入れる気はないのか」と質問。一例として、阪急電鉄のほうが広告の量が少なく、広告の美観に優れているとの考えも示した。 この質問に対して、藤井氏は「日頃から、事業者同士で情報交換を密にしており、取り入れられるものは取り入れていこうと考えています。貴重なご意見として参考にさせていただき、他社の動向等を注視しまして、皆様に安心して快適にご利用いただけるサービスをご提供できるように努めます」と回答した。 別の男性株主からは、池袋線・西武秩父線の特急「ちちぶ」について、飯能駅でスイッチバックが発生することをネックに感じているとの発言も。さらに、過去に西武新宿駅から西武秩父駅まで運行していた特急「おくちちぶ」に触れつつ、「日に1~2往復でもいいので、西武新宿から秩父へ向けた特急をまた走らせていただきたい」と希望する場面もあった。 藤井氏はこの意見に対して、「我々もいつも課題に思っているが、なかなか思うようにいかない」と前置きした上で、「なにか特別な機会があれば改善できるよう取り組んでまいりたい」と回答した。ちなみに、飯能駅の手前に元加治~東飯能間短絡線の用地があり、輸送需要等を見て検討しているというが、いまのところ整備の予定は立っていない。 所沢駅の配線についても言及があり、同駅南側で進行中の「ふれあい通り線」(アンダーパス)との関係で配線を変更しているため、現状では所沢駅でのスイッチバックが難しくなっているという。「回送できるタイミングを踏まえて、新宿から秩父へ行く特急についても、可能性があるかどうか含めて考えてまいりたい」と添えた。 なお、西武鉄道は新宿線の有料着席サービスを刷新し、2026年度中に運行開始予定と発表している。現在、新宿線で運行している10000系「ニューレッドアロー」を新たな車両へ置き換える一方、「柔軟な運行形態」「着席機会の拡充」などでサービス向上を図るとのこと。 今年の株主総会の所要時間は1時間39分。議決権を有する出席株主数は2万4,249名(委任状・インターネット含む)、議決権個数は214万7,357、会場に出席した株主は439名だった。決議事項の議案は、第1号「剰余金の配当の件」、第2号「取締役14名選任の件」、第3号「取締役の報酬額改定の件」の3点で、いずれも拍手多数により可決された。
若林健矢