無政府資本主義者のアルゼンチン大統領、中国を前に現実主義に転換
政治・経済的に不安定なアルゼンチンから一部の米企業が撤退する中でも、ICBCは3つの政権にわたってアルゼンチンにとどまり、全国で100万のリテール口座を獲得。アルゼンチンの著名テレビ司会者を広告キャンペーンに起用した。
中国は、北部のボリビア国境沿いのリチウム鉱山から、南極に近い南端に港を建設する計画まで、アルゼンチン国内で幅広いプロジェクトに関わっている。
中国がアルゼンチンのパタゴニア地方に建設した宇宙基地について、政府は査察に向けた中国との交渉を始めると、ミレイ大統領は明らかにした。米国は同基地が米国と同盟国への脅威となると懸念を表明している。米南方軍のローラ・リチャードソン司令官とミレイ政権の国防担当高官との会談では同基地が議題になったと、アルゼンチン紙ナシオンは報じている。
「われわれは状況を調査するつもりだ。それも問題ない」とミレイ氏は語った。
今世紀初め、米国がアフガニスタンとイラクで戦争をしている間に中国は南米に進出し、アルゼンチンで巨大なネットワークを築いた。投資は主に、アルゼンチンやボリビア、ブラジル、エクアドル、ベネズエラで左派政党が政権を握った、いわゆる「ピンクの潮流」の時期に始まった。それ以来、中国は銅や大豆を大量に買い、インフラ整備を支援し、南米最大の貿易相手国として米国を抜き去った。
ブルームバーグ・エコノミクスがまとめたデータによると、中国は現在、アルゼンチンの輸出先として隣国ブラジルに次ぐ2位。アルゼンチンにとっての主要な輸入元でもある。中国はアルゼンチンにとって、豚の餌に使われる未加工大豆と牛肉の最大の顧客でもある。また、電気バス用の電池に使われるリチウムの生産プロジェクトにも投資している。リチウム生産国としてのアルゼンチンの台頭は米国の目も引いている。
ただ、中国の国内市場が低迷する中で、同国の中南米投資は縮小している。最近の報告書によると、22年の中国の中南米・カリブ海諸国への直接投資は64億ドルで、10年から19年までの年間平均約140億ドルを大きく下回っている。