巨人・吉川 ゼット社グラブ工場訪問に密着 GG賞受賞堅守の裏にあるこだわり“遺伝子”グラブ
巨人の堅守を支える不動の二塁手・吉川尚輝内野手(29)が、アドバイザリー契約を結ぶゼット社の大阪・天王寺のグラブ工場を訪問した。232票の最多得票でゴールデングラブ賞を初受賞した背番号2とグラブ職人との打ち合わせに密着。「尚輝たまらん」、「振り向けば尚輝」と毎試合のようにSNSでトレンド入りし、ファンをうならせた守備の裏側に迫った。 手放さない。最多得票で初受賞したゴールデングラブ賞を「獲り続けたい」と意気込む吉川。球界屈指の守備力を誇る男の「相棒」の詳細を明かした。 「柔らかくなりすぎちゃうのが嫌。ここ(人さし指部分)が強いと打球にも負けない」。最大の特徴は人さし指部分を硬くしていること。同社グラブ職人の角正義弘氏によると、元々通常よりも硬い皮に、さらに加工を施して「ガッチガチにしている」という。 “常連組”のいいとこ取りだ。中京学院大の先輩でもある広島・菊池のグラブを参考にしたものが今の「吉川モデル」。さらに、西武・源田やソフトバンク・今宮も導入する小指部分に薬指と小指の2本を入れる通称「こゆに」仕様に。同社のイベントで2人と話し、吉川も昨季から取り入れた。 「“あっ”と惹かれたものが試合用。言葉にはしづらい。本当に感覚だから」と現在のグラブは3年間使用中だ。「ボールを捕った時の感触や入り方」と手になじむ感覚を優先するため、5本指仕様だったグラブを「こゆに」仕様に改良。シーズン中でも紐を締め直して、使い続けている。 ケアにもこだわる。試合や練習後に一番最初に行うのはソフトボールサイズのボールを入れ、型付け用のバンドで巻くこと。オイルも「しっとりしすぎないように。本当にパサパサになった時に」と極力塗らず、塗り方も「一カ所につけてそこから全体に伸ばしていく」という。さらに、納品されたグラブもすぐには使わず「一回巻いて“寝かせる”」と型をつけて“熟成”させてから使うのが吉川流だ。 好守で何度もチームを救った今季だが「自分の中で“2度とできないな”というプレーはなかった」と頼もしい言葉を口にする。究極の理想はゴールデングラブ終身受賞。堅守の裏には固いこだわりがつまっていた。(小野寺 大) ≪吉川は「感覚の人」≫ゼット社のグラブ職人・角正氏は吉川を「感覚の人」と表現する。球界屈指の二塁手に応えるため、キャンプ地や東京ドームに足を運び、打球を捕る角度などグラブの扱い方を研究。「データでも数字でもないところなので難しい。そこをくみ取って何とか作りたい」と明かす。作り手と使い手の強い思いが実を結んだ今季の活躍に「うれしかった」と喜んだ。