大手損保の政策株の適正な縮減、金融庁がモニタリングを-有識者
(ブルームバーグ): 金融庁は25日、損害保険業界の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議(座長・洲崎博史同志社大学大学院教授)の報告書を公表した。政策保有株式は「公正な競争の阻害要因となり得る」として、大手損保4社の縮減動向などを金融庁が適切にモニタリングすることが重要だと指摘した。
金融庁による政策株縮減のモニタリングについては、政策保有の目的にもかかわらず、純投資に区分するなどして実質的に保有が継続することのないようにすべきだと明記した。政策株は企業向け保険の入札などで、シェアに影響を及ぼし、営業担当者の競争意欲を阻害していたなどと金融庁は指摘していた。
有識者会議はビッグモーターによる自動車保険の不正請求や共同保険料の事前調整問題を契機に、3月から議論を始めていた。こうした問題が発生する背景として政策株の存在も含め、業界に横たわってきた構造的な問題を洗い出し、公正な競争環境の実現につなげる狙い。
損害保険ジャパンなど大手損保4社は、企業向け保険料の事前調整問題を受け政策株をゼロにする方針を打ち出した。ただ、MS&ADインシュアランスグループホールディングスは一部を純投資に振り向ける方針としている。
事前調整問題に関連して報告書では、低い保険料を提示した幹事会社に他の損保が保険料を合わせるといった従来の業界慣行を見直すよう促した。例として、シンジケートローンを参考にした方式や、保険料を統一せずに共同保険を組成する方式を示した。
また、一般的に顧客企業グループに属し保険会社との仲介役となる「企業内代理店」については、自立した保険代理店として公正な競争を行うことができる環境の整備を求めた。企業向け保険市場の発展に向けた保険仲立人(ブローカー)の活用なども促した。
報告書では、必要となる法律改正などについては、金融審議会の開催も視野に金融庁を中心とした対応を期待したいと述べた。同庁の担当者は法改正や監督指針について、必要な施策の具体的な検討を進めると述べた。政策株縮減のモニタリングに関しては、純投資とする合理的な理由の説明や一定の報告を求めることを含め今後、検討していくとした。