福島第1原発の廃炉迅速化へ 審査、検査方法見直し 安全性担保し効率化 原子力規制委員会
原子力規制委員会は東京電力福島第1原発の廃炉作業の迅速化と安全確保に向け、審査や検査の方法を見直す方針を固めた。放射性廃棄物の処理などでの審査の合理化を目指し新たな指針を策定する。検査内容も整理し、非効率な部分を解消する。溶融核燃料(デブリ)取り出しが始まり、廃炉作業は一層複雑さを増す。今年度内に可能な改善策から取り入れ、来年度から新たな指針を本格導入したい考えだ。13日の原子力規制委員会の会合で示した。 規制委が想定する主な改善点は【下記】の通り。福島第1原発での設備設置や作業の安全性を確認する「審査」は、2012(平成24)年策定の基準に沿って実施している。改善に当たっては、これまでの廃炉作業の経験を踏まえて設備や作業ごとにリスクの程度に応じて審査の効率化を進める。具体的には、放射性廃棄物の回収などの審査で安全性が十分と判断された施設や設備は従来必要だった耐震性の記載を省くなどして審査を円滑にする。同様の改善ができる審査の内容を精査・集約し、新たな指針に反映させる。
審査手続きのスリム化は廃炉を迅速に進める上で課題となっていた。規制委の委員から「配管の取り回しからポンプの置き場所の変更に至るまで申請・認可の形になっている」などの指摘が上がっていた。規制委は審査の見直しによって作業の効率性が向上すれば放射性物質の閉じ込め機能の確認といったより重要な事項に労力を振り向けられ、安全性の向上にもつながるとみている。 施設などが適切に管理できているかを監督する「検査」の内容も改善する。廃炉の進捗(しんちょく)で作業内容が変わり続ける福島第1原発では、旧来の検査手法を続けてきた。ただ、同じ設備で複数の検査を行い、放射線量などの監視データを何度も確認するなど非効率的な面も浮き彫りになっている。新たな規制検査導入も視野に、専門的な知見を持つ検査官による検査体制の在り方や、検査結果の重要度・深刻度の評価と公表方法なども再検討する。 規制委は来年2月までに改善点の全体像をまとめ、3月には検査の評価法などの運用を始める方針。審査の新たな指針などは来年度中の運用を目指す。
福島第1原発の廃炉を巡っては、建屋地下に残るゼオライト土のうなどの高線量の放射性廃棄物の処理が滞るなど、リスク低減対策が計画より遅れている。作業員の被ばくや処理水の放出停止などトラブルも続発しており、規制委は見直しを改善の一助とする考えだ。13日の会合では杉山智之委員が「合理化や効率化によって生まれた余裕を廃炉作業の加速化に生かしてほしい」と訴えた。 【原子力規制委が想定している審査や検査の主な改善点】 ■審査 ・原子力安全の観点から軽重を付けた審査 ・審査の経験や実績を踏まえた指針の策定 ■検査 ・検査内容の一本化など枠組みの再整理 ・原子力規制検査の手法の導入