補聴器にも使い方のトレーニングが必須!注目の「宇都宮方式聴覚リハビリテーション」とは?~改善できる危険因子・難聴④
不適合の補聴器が売られている
最初にご紹介した通り、新田先生のところには、補聴器を買ったにもかかわらず「使えない」状態の患者さんたちも多く訪れているわけだが、その233例について先生のグループが2010年4月~16年1月までに行った調査では、1例を除く232例(99.6%)が、実際に「適合不十分」だったという(→注1)。 「内訳は,器種選択の誤りが129例(55%)、調整の不適が85例(37%)、故障18例(8%)でした。それらの原因に応じて当科補聴器の貸出や調整などの対処を行った結果,持参補聴器の使用継続を選択した28例を除いた204例(88%)が適合となりました」 つまり、間違った補聴器を選んだり、しっかり調整できていない補聴器を使ってしまうことが、満足いく「聞こえ」の実現を妨げているということだ。 「このうちの器種選択の誤りというのは、中等度以上の難聴患者に対して、軽度難聴用の補聴器など器種の適応聴力範囲が患者の聴力レベルと合致していない補聴器が販売されている例が多数でした。また調整の不適では、装用効果よりも装用下での不快感を避けることを優先した調整が行われていた可能性が示唆されます」
不快感を除く調整
どういうことなのだろうか。 「難聴の耳に聞き取りが改善するレベルの音を入れると、静かな環境に慣れてきた『難聴の脳』に最初はとても不快に感じます。特に食器や紙のこすれる高音域の音や、換気線や車のエンジン音など低音域が気になるという声が多いのですが、使用者の訴え通りに高音域と低音域の音量を下げると、聞き取りは悪くなっていきます。そこで、『聞こえない』と言われると、今度は人の話し声が多い『中音域』をアップさせたりする。その結果、中音部だけわずかに聞こえが良くなった補聴器が出来ますが、それは聞こえないよりはマシと言う程度のもので、十分に聞こえが良くなったといえるものではありません。 実際の生活では、いろんな音の中から会話を『聞き出していく』わけですから、不快に感じる音がある程度聞こえてくることは仕方ありません。環境としていろんな音がある中から必要な音を聞き出せるようにするのが、トレーニングの肝なのです」 では、どうして間違った調整が行われてしまうかと言うと、「適切な調整のための一定レベルの知識や技能を持ち合わせていない調整者・販売者が存在するからではないか」と新田先生。 しかしそうなると、補聴器の知識や技術を持つ調整者や販売者たちをどう探せばいいのだろうか?