若者が就きたがる仕事がなければ韓国の未来もない(2)
(1の続き) ■未来のための雇用を増やすべき どのような仕事であろうと増えるのはよいことだ。より多くの人が経済活動に参加し、お金がうまく循環すれば、経済全体にとっては助けになる。しかし、よりよい未来を考えるなら、未来の成長動力となる産業領域が活性化された方がよい。老齢人口をケアする業種で就業者数が増加すれば、就業者の総数は増える。雇用率が高まったのだから韓国経済は良好な状態にあると評価することもできるだろうが、逆に若者たちが未来を作っていくべき業種で就業者数が減少するのは致命的だ。 なぜ若者たちが就業市場にうまく参入できないのかは誰もが知っている。今日明日の所得のために就職する時と未来を考えて就職する時の基準はどうしても異なる。就職は賃金を得るためにするものだが、未来を考えて就職しようとすると選択の幅は非常に狭まる。 韓国では、どこで社会生活をはじめたかが一生を左右する。統計庁によると、2022年の大企業の労働者の平均所得は月591万ウォン(約64万8000円)で、中小企業(286万ウォン、約31万4000円)の2.1倍だ。20代の若者では大企業と中小企業の賃金格差は1.6倍だが、40代は2.2倍、50代になると2.4倍へと拡大する。 実際に、大学生たちにアンケートで就職したい企業を問うと、中小企業は16%に過ぎず、大企業が64%、公共部門が44%。このような統計を扱った韓国経済研究院(KDI)の報告書のタイトルは、「より多くの大企業の雇用が必要だ」だ。大企業を規制して中小企業を支援する韓国の産業政策は、若者の就業を増やすのとは逆の方向に向かっている。 若者たちは「スタートアップ」には就職したがるが、「中小企業」には就職したがらない、という冗談がある。スタートアップも中小企業だが、若者たちはうわべばかり気にしている、という皮肉混じりの冗談だ。しかしここで重要な基準は、将来的な成長の可能性だ。政府の支援を受けて低原価でかろうじて生存している会社を「中小企業」、未来のために新たな事業を作り出していく企業を「スタートアップ」と分類してみれば、視点は変わる。 韓国は中小企業に対する支援が厚い国だ。中小ベンチャー企業部の予算は、2018年には8兆9000億ウォンだったが、2022年には19兆ウォンへと大幅に増えている。実際には、中小企業政策は中小ベンチャー企業部だけが行うものではないため、正確な中小企業支援予算の規模は把握が難しい。直接支援だけでなく、政府保証を通じた間接的な金融支援の規模もかなり大きい。政府が保証する韓国の中小企業に対する融資の比率は国内総生産(GDP)の4%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の0.1%に比べて圧倒的に高い。 中小企業の支援、育成政策は、韓国社会において「絶対善」と認識されている。中小企業政策は産業政策だが、まるで社会的弱者を助ける福祉政策のように認識される傾向がある。企業数も、企業総数の99%を中小企業が占めるため、政治的にも有利だ。しかし、中小企業政策は明確な基準を定めないと政府支援によって生き延びるゾンビ企業を増やし、革新を阻害するという副作用を生む。 韓国の中小企業政策の現実は、国内より海外でむしろ冷静な評価がなされている。OECDは2022年の「韓国経済報告書」で、「生産性の低い中小企業に対する過度な支援を縮小するとともに、規制の改善、研究開発支援を通じて生産性を高める必要がある」と評している。未来のために投資はするとして、生き残らせるだけのための支援は縮小すべきだということだ。 ■OECDの冷静な評価 OECDの2018年の「韓国経済報告書」にも、同じ脈絡の記述がある。OECDは「韓国では、大企業と比べた中小企業の生産性は1997年の通貨危機の時よりも低い30%台であり、政府保証融資の水準はOECD加盟国中2位であるにも関わらず、グローバル革新ネットワークとの連携性は低い」と指摘している。また「すでに中小企業を支援するために、ほぼ1千件のプログラムが運用されている。中小企業支援は、生産性向上のためのものなのか、延命のためのものなのかを区別しなければならない」と述べている。将来的に成長の可能性の低い、若者たちが就きたがらない仕事の維持のために、天文学的な資源が投与されているということだ。 祖父は後進国で、父親は発展途上国で、息子は先進国で生まれた。韓国はそういう国だ。これまで全世界が注目する経済成長を成し遂げてきたが、その成功の公式は今後の韓国経済の方向性を照らし出してはくれない。雇用率が高ければ現在の韓国経済を回すことはできるが、若者たちが就きたがる仕事がなければ未来はない。つらくて難しくて賃金の安い仕事に若者が就きたがらないと舌打ちして嘆いている場合ではない。 クォン・スヌ|3プロTV取材チーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )