【資産総額4億円】60代の父と母、愛する娘へ財産を承継させたい一方で…娘婿が「棚ボタ式のおいしい思い」をするのは阻止したい
夫婦二人三脚で資産を築いた60代の夫婦。大切な2人の娘に、着実に財産を承継させたいと考えていますが、一方で、血族ではない「娘の配偶者」に好き勝手されるのではという不安もあります。阻止する方法はあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
夫婦で築いた資産、娘たちへ確実に渡したいが…
今回の相談者は、60代の山田さん夫妻です。2人の子どもへ財産を渡す方法について相談したいと、筆者の事務所を訪れました。 山田さん夫妻はともに東北地方の出身で、結婚後に上京。夫婦で自営業を成功させました。保有する財産は、世田谷区の自宅マンション、夫妻の共有名義となっている賃貸アパートのほか、夫婦それぞれが所有する預貯金や有価証券などを合わせると、4億円近い資産です。 「私たち夫婦には、30代の娘が2人います。長女は3年前に結婚し、先日は孫も生まれました。二女はまだ独身です。この2人の相続をどうしたらいいか…」 山田さん夫妻の場合は双方に財産があるため、いまから節税対策を考え、評価を減らすことも含めた節税案の検討が必要だといえます。筆者と提携先の税理士は、相続税も気になることから、一次相続と二次相続の相続税を比較して、分割案を検討しておく必要がある旨、アドバイスしました。
娘に持たせた資産が、婿に流れるのは阻止したい
しかし、どうも話がスムーズに進みません。 「先生、娘たちのことは本当に大切ですし、孫は目に入れても痛くないほどかわいいのです。娘2人と孫の幸せを、夫婦ともいちばんに考えています。ですが…」 山田さんのご主人が重い口を開きました。 山田さん夫婦は、長女の結婚相手に不信感をお持ちのようでした。詳しく伺うと、娘婿は5歳年下でバツイチ。ご夫婦に対する態度も、長女に対する態度に横柄さが見え隠れして、不安だとのこと。 「最初は殊勝な態度だったのですが、顔を合わせるたびに自分勝手な振る舞いが目立ち、気がかりです。それに、これまでに何度も車を買い替えるなど、金遣いも荒い。ですが、娘はなにをされてもニコニコしているだけで…」 平均寿命からみれば、女性の方が長寿ではありますが、夫婦のどちらが先立つかはわかりません。 「二女はまだ独身ですが、いずれ結婚することになるでしょう。しかし、万一娘が配偶者より先に亡くなるようなことになれば、娘に持たせた資産は婿に流れてしまいます。私たちが汗水たらして築いた財産で、他人の婿が棚ボタ式においしい思いをするのは納得できません。財産が婿に流れることなく、娘から孫に直接わたるような、よい方法はありませんか?」 山田さん夫婦は、娘たちに相続させた財産が、娘の配偶者に渡らないようにする方法を探し、対策を進めたいと考えているとのことでした。 「いま、長女に不動産を管理させ、家賃を娘2人で分けるという方法を考えていますが、どうでしょうか。1人ずつバラバラに収益不動産を持たせると、どうしても配偶者の干渉があるでしょう?」 「ほかにも、家族信託を使う方法もあると聞き、迷っています」