大阪城に残る西郷・大久保の自筆文字を日本酒ラベルに
幕末・維新150年を記念し、大阪城天守閣と大関、池田泉州銀行、マクアケが連携し、クラウド・ファンディングを活用して日本酒を限定発売するプロジェクトが進行中だ。「夢」と「人」。ボトルのラベルには維新の立役者の自筆文字が息づく。 【拡大写真付き】幕末・維新150年の節目 大阪にある「ゆかりの地」とは?
志士たちの理想に迫る自筆文字を厳選
プロジェクトは池田泉州銀行の地域創生事業の一環。大阪城天守閣が所蔵文化財を提供し、大関が酒造りを手掛け、マクアケがクラウド・ファンディングを運営する4者連携で進む。 商品開発に際し、大阪城天守閣が所蔵する西郷隆盛と大久保利通の自筆の書をひもとき、使用する文字を選定した。大久保の文字は「夢」。縦に長い繊細な字体だ。 関係者によると、維新成立後、中央集権型官僚政治を推し進めていく大久保には合理的な実務派のイメージが強いが、西郷が幼いころから心を許したように夢を追う理想家肌の一面を兼ね備えていたという。酒は大吟醸酒で、毎春開かれる全国新酒鑑評会の出品酒だ。きりりとした気品を放つ。 西郷の文字は「人」。ぐいと横に広がる。勢いのある流麗な筆致に、人間西郷のおおらかさが漂う。大久保の「夢」と比べて、西郷の「人」のボトルはやや丸みを帯びる。体型もさもありなんだが、西郷の包容力の大きさを表現したという。 酒は吉野杉の樽に詰めて熟成させた純米酒。上方の酒が樽廻船で江戸へ運ばれ、「下り酒」と呼ばれて親しまれていたころの日本酒の味わいを再現した。口に含むとまろやかさに心が和む。
大坂の陣と維新の舞台を重ねて味わい深く
2本セットの商品名が「語らいの酒 夢人」。事業資金を、広く市民から小口で調達するクラウド・ファンディング方式を採用。目標金額は300万円で、募集期間は7月30日まで。限定販売のセット商品が入手できる他、金額別コースに応じて、酒蔵見学や学芸員の案内による天守閣プライベートツアー参加などの特典が付く。 大関は兵庫・灘の代表的蔵元ながら、江戸中期の創業期に大坂屋を名乗るなど、大坂とのゆかりが深い。歴史的な里帰りをはたす大関の代表者は「大関単独では大阪城天守閣の貴重な文化財を借り受けることはむずかしい。地域創生プロジェクトの一員だからこそ実現できる」と、クラウド・ファンディングの意義を強調する。 大坂城は400年あまり前、大坂の陣の舞台となった。西軍を率いた豊臣家が滅び、徳川政権による天下統一が確定した。やがて幕末に至り、今度は西国雄藩の薩摩、長州、土佐らが幕府と対立色を深め、倒幕をうかがう。 大坂城には最後の将軍徳川慶喜が陣取り、外国要人を招いた外交活動で元首の威信を示して状況打開の機会を待つ。しかし、鳥羽伏見の戦いで幕府軍の敗走が伝えられる中、慶喜は敵前逃亡を図って大坂城を退却。西郷や大久保率いる官軍が勢いを強め、時局は維新の早期成立へ加速していく。 幕末・維新150年関連事業は全国各地で展開中だ。大坂城の存在感は、大坂の陣からの時間的蓄積を秘めている分だけ、熟成された古酒のように味わい深い。趣の異なるボトルを並べ、志士たちと語らいながら盃を傾けるひとときは、さぞや格別だろう。クラウド・ファンディングに関する詳しい情報はマクアケの公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)