トヨタ・アクアが全盛時の4分の1しか売れていない! それでも「心配ご無用」な至極当然の理由
数字で見るとじつはそんなに悪くなかった
販売網の違いもある。初代アクアの時代は、トヨタでは販売系列によって取り扱い車種を区分していた。たとえばヴィッツはネッツ店、カローラシリーズは文字どおりカローラ店のみの取り扱いだ。ところがアクアは初代モデルから全店で販売していた。販売網が大きかったネッツ店で売るヴィッツと比べても、取り扱い店舗数は約3倍だから販売面で有利だった。それが2020年5月以降は、すべてのトヨタ車を全店で扱っているため、アクアの優位性は薄れた。 以上のような理由でアクアは売れ行きを下げたが、不人気車とは呼べない。なぜならハイブリッドというパワーユニットに限定して、トヨタのほかの小型車と売れ行きを比べると、現行アクアも決して少なくないからだ。 小型/普通車の販売ランキングでは、カローラやヤリスが上位に入るが、これは複数のボディとパワーユニットを合計したシリーズ全体の数字だ。カローラシリーズでもっとも登録台数の多い車種はSUVのカローラクロスで、シリーズ全体の50%弱を占める。ハイブリッド比率は94%と高いが、2024年のカローラクロスハイブリッドの1カ月平均登録台数は約6400台だ。 ヤリスでは、ハッチバックボディのヤリスとSUVのヤリスクロスがほぼ同等に売られている。この内、ヤリスのハイブリッド比率は約45%で、2024年の1カ月平均登録台数は約3000台だ。アクアの2024年1~8月の1カ月平均登録台数は前述の4895台だから、じつはヤリスハイブリッドよりも多い。 以上のように現行アクアの売れ行きは、初代モデルと比べると22%に留まるが、コンパクトなハイブリッド車では中堅から上位に位置する。今はトヨタのコンパクトな車種の大半にハイブリッドが用意され、人気のカテゴリーはSUVだからアクアのようなハッチバックは伸び悩む。そこまで考えると、アクアの売れ行きは妥当といえるだろう。
渡辺陽一郎