アギーレの可変システムは機能するか ── 長谷部のポジショニングを注視せよ
2大会連続5度目のアジアカップ制覇を目指す日本代表が、12日にパレスチナ代表とのグループリーグ初戦を迎える。アギーレジャパンが臨む初めての公式戦となるが、ハビエル・アギーレ監督の下で行われた6つの国際親善試合を見て、ちょっと混乱をきたしたファンもいるのではないだろうか。 アギーレ監督は「4‐3‐3システム」を基本にすえると明言していたが、実際には最終ラインが3枚になっているときもあれば、前線が1トップ気味になっているときもあった。試合中にシステムが多様に変化している理由は、指揮官のこの言葉から紐解くことができる。 「私の『4‐3‐3』はボールを持てば『3‐4‐3』に、相手ボールのときは『4‐1‐4‐1』になる」 基本とするスタートポジションから、状況によって選手の配置を変える。いわゆる「可変システム」が導入されているわけだが、具体的にはどのように選手が動くのか。 逆三角形型で構成される「4‐3‐3システム」の中盤で、ちょうど三角形の底の位置に入るアンカーと呼ばれる選手の動きをたどっていけば最もわかりやすいだろう。 マイボールになると、アンカーはセンターバックの間に下がって3バックを形成。それまでの左右のサイドバックが高い位置取りとなって「3‐4‐3システム」に変わる。相手ボールになるとアンカーが元の位置に戻り、前線の「3」の左右が下がってアンカーの前に4人が並ぶ「4‐1‐4‐1システム」となる。
アギーレ流の「可変システム」のメリットは、攻守両面で相手よりも多い人数をかけられること。攻撃時は左右のサイドバックがウイングのような役割を果たし、守備時には自陣に強固なブロックを形成することで、ボールを奪ってから速攻を仕掛けることができる。 アンカーを配置する戦い方は、岡田武史監督の下でベスト16に進出したワールドカップ南アフリカ大会でも採用されている。当時は「4‐1‐4‐1システム」のままで、アンカーを務めた阿部勇樹(浦和レッズ)は基本的に最終ラインの前で守備に徹していた。 アギーレジャパンでは、アンカーに求められる要素は多岐にわたる。豊富な運動量と高度な判断力はもちろんのこと、最終ラインに下がって攻撃の起点となるときは長短のパスを正確に配球することが、相手ボールのときには危機察知能力をはたらかせながら前にいる4人を動かすことが特に重要な仕事となる。