<恋するラグビー>ラグビー日本代表に戻った「天才」 29歳、山沢拓也が目指すもの
◇ラグビー 「リポビタンDチャレンジカップ」(29日・秩父宮ラグビー場) ◇○マオリ・オールブラックス36―10ジャパン・フィフティーン● 天才――。10代の頃にそう評されたのが懐かしい。将来を期待されたラガーマンが30歳を前に代表に戻ってきた。マオリ・オールブラックス戦にスタンドオフ(SO)で先発した日本代表の山沢拓也選手(29)=埼玉パナソニックワイルドナイツ。「魅了して勝つ」をピッチ上で体現する司令塔だ。 相手の防御網の「穴」を見つけると自ら突破を試みたり、キックで仲間を走らせたりして何度もトライに迫った。瞬時のひらめきで攻撃にリズムをもたらし、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が掲げる「超速ラグビー」を体現。「ボールを速く動かす上で早い声かけを意識した。(司令塔として)テンポを上げるところのマネジメント、ゲームコントロールも必要だが、自分ではまだまだと思っている」と振り返った。 山沢選手は2012年、深谷高(埼玉)で3年時に当時のジョーンズHCの目に留まり、日本代表合宿に呼ばれた。筑波大4年時にはパナソニックに加入し、史上初となる大学生の旧トップリーグ選手にもなった。魅力は正確で多彩なキックと走力を生かした相手の裏をかくプレー。ただ、左膝など度重なるケガに苦しむ期間も長かった。日本代表で力を発揮しきれず代表キャップ数は7にとどまる。ワールドカップ(W杯)出場経験もない。 それでも「一つ一つの練習を無駄にせず、本当に一生懸命やって自分の成長につなげたい」と向上心に衰えはなかった。22日のイングランド戦では途中出場で約1年半ぶりとなる代表戦のピッチに立つと、4万人を超える観客から大声援を受け、トライも決めた。ファンからの日本代表司令塔としての待望論に、本人は「自分のペースでやれたらいいなと思います」と言う。 3年後のW杯オーストラリア大会に向けては「現時点では意欲とかは全く(ない)」と冷静に振る舞う。2度目となる「エディー・ジャパン」での再出発。あくまでマイペースに活躍のチャンスをうかがう。【角田直哉】